新型コロナ禍は感染拡大の第6波に突入し、私たちは長期間にわたってストレスを受け続けています。自分自身や、部下や家族が出している「うつのサイン」をどのように見つけて対処したらいいのでしょうか。職場のうつ、更年期特有のうつ、介護でのうつ、さらに、うつを体験した人の声などを取材してお届けします。

 うつは身近な病気ですが、自分自身がかかったとき、そのサインに気づかずに一人で苦しんでしまったり、理解を得られず周囲との関係をぎくしゃくさせてしまったりすることもあります。ある日、ゴミを出しに行くことすらつらくなって、うつ症状なのかもと気づいたという、大宮エリーさん。当時を振り返って話を聞きました。

うつと気づくまで不安と苦しさの1カ月間

編集部(以下、略) 多方面で才能を発揮し、つねに活動的で元気なイメージがありますが、ご自身がうつかもしれないと感じたのはいつごろ、どうやって気づいたのですか?

大宮エリーさん(以下、大宮) 今から5年ほど前、2017年のことですが、最初はうつとは思ってもいませんでした。何か落ち込む、やる気が出ないという感じで、「やることはいっぱいあるのに!」「頑張らなきゃ」と自分にはっぱをかけるのですが、ソファからなかなか起き上がれなくなっていたのです。

大宮エリー
大宮エリー
おおみや・えりー/画家、作家、脚本家、演出家、映像ディレクター。1975年、大阪生まれ。2006年に映画『海でのはなし。』で映画監督デビュー。著書に『生きるコント』『思いを伝えるということ』(文春文庫)など。12年「思いを伝えるということ」展は1万5000人を動員。以降、国内外で展覧会を開催。瀬戸内国際芸術祭2022にも出展予定。19年、クリエーティブ力を鍛えるオンライン学校「エリー学園」を立ち上げ、さまざまなジャンルの講師を招いて新たな創造の場を生み出している

 最初は怠け者だから起き上がれないのかなと思っていたのですが、料理が好きで、料理することが仕事の息抜きや生活の張りになっていたのに、その料理ができない。トイレに行くことすら、頑張らないとスッと立って行かれない。

 なんで、どうしてできないんだろうともがいているうちに、ついにゴミを捨てに行けなくなって……。いよいよおかしい、これは病気かもしれない。うつってこういう感じなのかなと思ったのです。私は病院に行っていないのでうつと診断されたわけではありませんが、病気かもしれないと気づくまでに1カ月ほどかかりました。その間、本当に苦しかったし、つらかったですね。