「無鉄砲な挑戦」は若者の専売特許ではありません。40代、50代を迎えてから高い壁を越えようと果敢に挑む女性たちがいます。俳優、プロ競輪選手、医師、ワイン醸造家……人生経験を積んでからの挑戦には、20代の挑戦とは違う苦労、そして喜びがあると彼女たちは口にします。何が彼女たちを駆り立てたのでしょうか。年齢の壁をものともせず、新たな使命に向かって突き進む女性たちの挑戦に迫ります。

 「おちゃのこさいさいやーー!」。TVドラマ『ルパンの娘』では強烈な存在感で視線をくぎ付けに。映画『カメラを止めるな!』で女優としてブレイクしたどんぐりさん(60歳)。長年続けてきた事務職の仕事を辞め、「芸能の道」に飛び込んだのは50歳のとき。踏み切れた理由とは? 挑戦を続ける極意とは?

―― 一度見たら忘れられないインパクトがあって、いろいろな作品や番組に出演されている印象のどんぐりさんですが、女優としてのキャリアはまだ3年なんですね。

どんぐりさん(以下、敬称略) 年齢がいってるので、前から女優をやっていたベテランのように思われがちなんですが、本格的には映画『カメラを止めるな!』(2017年)からです。今、仕事はどこへ行っても新鮮です。撮影現場ではこんな道具があるのかとか、こんな撮影方法があるのかとか。浜辺のシーン1つでも、かなり遠くまでロケに行って撮影することにびっくりしたり。初めてのことが多くて楽しいし、今はこの仕事ができてうれしいです

どんぐり/1960年、大阪生まれ。短大卒業後、証券会社に入社。いくつかの職を経験しながら40代で落語に出合い、アマチュア落語家としても活動。50歳で吉本総合芸能学院(NSC)に入所。その後、演技を学び2017年『カメラを止めるな!』で長編映画に初出演。TVドラマ、バラエティー、映画などで活躍中
どんぐり/1960年、大阪生まれ。短大卒業後、証券会社に入社。いくつかの職を経験しながら40代で落語に出合い、アマチュア落語家としても活動。50歳で吉本総合芸能学院(NSC)に入所。その後、演技を学び2017年『カメラを止めるな!』で長編映画に初出演。TVドラマ、バラエティー、映画などで活躍中

50歳のある日「え、私このままでええんか?」

―― 芸能の道に飛び込んだのが50歳のとき。それまでは手堅い事務職の仕事を続けていたというのが意外です。

どんぐり 短大を卒業した後、証券会社に入社して、営業をしていました。株式、投資信託、国内債券、外国債券……いろいろ担当しました。33歳で証券会社を辞めてから派遣に登録していろいろな職場を経験。40歳のとき、裁判所の求人を見つけて「普段なかなか行かない裁判所、履歴書を出しに行くだけでも経験になる」と思って応募したら採用されました。準職員として事務の仕事をして、法廷にも入りました。貴重な体験でした。

 それでもずっと、自分に向いている仕事は何なんやろ、と思っていました。事務職があまり向いてるとは思ってなかったんです。そして50歳になったある日、昔見たドラマのシーンをふっと思い出したんです。

 NHKの大河ドラマ『秀吉』(1996年放送)の「人間50年……」という織田信長の言葉。「いま50歳、信長だったらもう死んでる。え、私このままでええんか?」と思って。それで、普段はあまり見ないんですがその日に限ってネットを見ていたら、NSC(吉本総合芸能学院)の募集広告があったんです。