「サードプレイス」という言葉を耳にする機会がにわかに増えてきました。家庭でも職場でもない、心地よい「第3の場所」。ARIA世代にとって、どんなサードプレイスを持つことが理想的なのでしょうか。サードプレイスを持つことで、人生はどう変わっていくのでしょうか。人生を輝かせるサードプレイスの見つけ方、そして見つけた人の実例を紹介します。

 特集初回の記事「サードプレイスは人生の財産 見つけ方と付き合い方」で法政大学大学院政策創造研究科教授の石山恒貴さんが「世の中、実はサードプレイスだらけ」と話していたように、仕事や家庭とは別のコミュニティーは身近なところにたくさんあります。では、そこにはどんな世界が広がっているのでしょうか。実際に「趣味系」「地域活動系」のサードプレイスを持つ二人のARIAさんにお話を聞きました。

作者を伏せて俳句を選び合うシステムに興味

 「最初は高校時代からの友人に誘われて、暇だし行ってみようか、くらいの感覚でした。それで気づいたらもう13年ですね」

 シンクタンクで研究員をしている沢村香苗さんのサードプレイスは、俳句の会。初めて参加した29歳のときは夫と二人暮らしでしたが、現在は小学5年生の長女、3年生の長男、年長の次女を育てる母となり、多忙な毎日を送っています。そうした生活環境の変化の中でも俳句はつかず離れず、常に沢村さんの生活とともにありました。

 沢村さんが所属しているのは、日本伝統俳句協会が初心者向けに立ち上げた「卯浪(うなみ)俳句会」の原宿教室。15人ほどのメンバーが月に1回集まって活動しています。沢村さんが初めから興味を引かれたのは句会のシステム。まず、先生も含めた全員が自作の俳句(1人7句)を短冊に書いて提出します。それをシャッフルし、筆跡で作者が分からないよう、手分けして清書。その後、各自がいいと思った句を7句選びます。票が入った句が発表される段階で初めて作者が名乗り出て、その後先生から批評を受けます。「誰のものか分からない俳句を選んだり、誰かから選ばれたりというのが面白いなあと思いました」

 昔から本を読んだりすることは好きでしたが、自分で創作する行為は初めての体験。俳句は「5・7・5で、季語を一つ入れる」という決まり以外は、特に指導を受けて作り方を学ぶものではないので、初めは手探りで「俳句らしきもの」を作るところから始まりましたが、これも意外に楽しいことだと気づきました。

本名と同じ読みで表記を変えた「沢村鼎(かなえ)」という俳号で活動する沢村さん。俳句の題材を求めてよく川辺に足を運ぶ
本名と同じ読みで表記を変えた「沢村鼎(かなえ)」という俳号で活動する沢村さん。俳句の題材を求めてよく川辺に足を運ぶ
ARIA世代の二人が見つけたサードプレイスの魅力とは? 次ページ以降で紹介
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