人生100年時代、大人の学びから逃げていると仕事人生は全うできない――。そう警告するのは、『働く大人のための「学び」の教科書』の著書もある立教大学経営学部教授の中原淳さんです。今いる組織の中で安住していてはいけないのはなぜか。学びの一歩はいつ、どのように、どう踏み出せばいいのか。全3回でお伝えします。

(1)人生100年時代のキャリアには「下山と再登山」が必須
(2)「学び=資格取得」と考えるのはなぜダメか ←今回はココ
(3)サードプレイスを見つける「越境」を今すぐ始めよう

―― 前回は、自分の人生を主体的に歩むためにも、次のキャリアを見据えた「再登山」を考えるべき、というお話を伺いました。再登山のためには、学びが必要になりますよね。どんな学びを始めたらいいのでしょう?

中原淳さん(以下、敬称略) 誤解を恐れずに言えば、大人が「学び」という言葉ですぐに脳裏にイメージするような「学び」に踏み出す前に、少し考えてほしいのです。「学ばなくては」と思うと、まず思いつくのが「学校」でしょう。次に思い出すのは「資格」じゃないですか? 特に社会人の場合は、なんとかプランナー、なんとかマイスター、なんとかアドバイザーといった、資格を取得できる学校をイメージする人が多いのではないでしょうか。

 もちろん、そうした資格が次のキャリアにつながる人もいないとは言いません。が、多くはそうはならないのです。「自分としては、あまり関心はないけれど、何となく世間やCMではこの資格があると有利だというし、この資格さえあれば潰しが利いて、道が開けるんじゃないか」という考えで資格を目指してもうまくはいかないと思います。それは、資格を取ったからといって、勝手に「お客」が集まってくれるわけではないからです。それをビジネスにするためには「顧客」が要るのです。

立教大学経営学部教授の中原淳さんは、「何となく資格を取る」学びに疑問を呈している
立教大学経営学部教授の中原淳さんは、「何となく資格を取る」学びに疑問を呈している

資格取得で利するのは誰か?

中原 これまたキツい言葉になりますが、ほとんどの資格は取得しただけでは食えないと思ったほうがいい。かつ、(民間の)資格試験はビジネスになっていることが多いですね。つまり、資格取得は、他人を利することになるということです。

 あまり知られていませんが、教育をビジネスにする一番簡単な方法は、「新しい資格」を作り、その資格取得を目指すコンテンツをつくることなんです。資格を更新制にすれば、ずっと食えるビジネスになります。「何となく資格があればいいことが……」という気持ちで、他人の教育ビジネスに巻き込まれないでほしい、と思っています。自分の学びを取り戻してください。自分の学びを他人任せにしないでください。

―― 自分が主体となる学びとは、どんな場で学べばいいのでしょう?