人生100年時代、大人の学びから逃げていると仕事人生は全うできない――。そう警告するのは、『働く大人のための「学び」の教科書』の著書もある立教大学経営学部教授の中原淳さんです。今いる組織の中で安住していてはいけないのはなぜか。学びの一歩はいつ、どのように、どう踏み出せばいいのか。全3回でお伝えします。

(1)人生100年時代のキャリアには「下山と再登山」が必須 ←今回はココ
(2)「学び=資格取得」と考えるのはなぜダメか
(3)サードプレイスを見つける「越境」を今すぐ始めよう

―― 中原さんは、組織の中にいる40代、50代に対して、学び続けなくてはいけないと提唱されていますね。

中原淳さん(以下、敬称略) 私はこれまで約20年間、企業組織における人材開発や経営学習について研究してきました。主な研究テーマの一つは「新入社員など経験の浅い人を、どのように育成すれば早く戦力化できるか」。そしてもう一つは「新任や駆け出し期の管理職やマネジャーを、一人前のリーダーに育てるにはどのようなサポートをすればいいか」ということです。

 一人で成果を出すソロプレーヤーから、他人を動かして職場の成果を出すリーダー・管理職への役割移行は難しさを伴うもので、ハーバード・ビジネス・スクールのリンダ・ヒル教授は、この難しさを「生まれ変わり」と表現しているほどです。読者の方にも苦しい経験をされた人、今まさにその渦中という人もいるでしょう。

立教大学経営学部教授の中原淳さんは、組織の中にいる40代、50代に対して、学び続けなくてはいけないと提唱している
立教大学経営学部教授の中原淳さんは、組織の中にいる40代、50代に対して、学び続けなくてはいけないと提唱している

中原 これら2つのテーマは、いずれもキャリアをステップアップしていくものです。例えるなら、仕事人生における「登山の研究」と言えるでしょう。

 一方、山登りに頂上があるように、キャリアにもそれ以上は上昇できないピークがあり、誰もがいつかはそのピークに差し掛かります。そこからの仕事人生をどう描けばいいのでしょうか。そのことを数年前から新たな研究テーマとして考えてきました。