化粧品の作り手として、また売り手としてひとりでも多くの女性にその魅力を伝えたいと心血を注ぐ愛すべき経営者たち。原点にある情熱、面白さと難しさ、 紆余曲折から思い描くビジョンまで、『etRouge』編集長の麻生綾が思いつくままにインタビュー。今回は、化粧品会社ではなく美容室の定額サービス〈MEZON(メゾン)〉をスタートさせた若き経営者、鈴木みずほさんを直撃!

日常的に美容院を利用するライフスタイルを提案したい。

麻生(以下A):この連載では最年少の経営者です。会社を起こしたときは20代でしたよね。

鈴木さん(以下敬称略):28歳です。

A:シャンプー&ブローセットを毎日人任せにできる、働く女性には夢のようなサブスクリプション。これは革命だ! と思いました。私も登録しましたが、サロンの発掘や新たな出会いが楽しいし、サロン側も集客の機会になる。その発想はどこから?

鈴木:サイバーエージェントグループの社員だったとき、大事な打ち合わせやプレゼンの前には必ず美容室でセットをしていました。髪が決まっているときのほうがプレゼンや商談の成功率が高いと感じていたので、そういったカットパーマだけではない美容室の使い方を世の中に提案したいと思っていたんです。と同時に、仕事の場所はさまざまですから、わざわざなじみの美容室まで出向くのは効率が悪い。予定に合わせて直近のサロンにいつでも気軽に駆け込めたらいいなという、自分が利用したいサービスを形にしました。

A:メイクとかヘアとか、そもそも美容がお好きなのですか?

鈴木:綺麗になることは好きです。自信や才能を開花させてくれますからね。でも、過程にはまったく興味がなく、結果がすべてだと思っています。自分で髪をセットするのは、得意でもないし楽しくもない。だったらアウトソーシングしたほうが、生産性が上がると。

A:なるほど、明快ですね。このサービスが広まれば、忙しい人はサロンでシャンプーが当たり前になったりして。事実、私の周りの忙しい女性たちは、MEZONの話をすると皆、食いつきますから。

鈴木:日本人が美容室に行く回数は、平均で年4・4回。3カ月に1回しか行っていません。うちの月額定額サービスで提供したいのは、コンビニの感覚で美容室を利用するライフスタイルです。

自社、提携先、利用者が笑う 三方良しのビジネスを学ぶ。

A:20代の女性が起業して、こんな新しいサービスを立ち上げたのはびっくりしました。どんな環境で育ったのか、教えてください。

鈴木:父は不動産業の会社を経営していました。小さい頃から、将来は父のあとを継ぐと思っていたのですが、中学のときに会社が傾き、生活は一変。そこで、頑張り続けて成長し続けないと会社は維持できないこと、またその結果、周りの人の運命や人生まで変わるということを思い知ったのです。そこで、中学3年のときに、絶対に経営者になる! と決めました。

A:そのために何かを勉強をしたり、行動を起こしたりは?

鈴木:具体的には特になかったですが、一つだけ決めていたことがあります。29歳までに会社を立ち上げるという期限です。そのために3つの自由を手に入れよう、と。やりたいことがやれる自由、それを実現できる資金的な自由、私の夢についてきてくれる仲間を得る自由。18歳のときにそれを決めて、大学時代はずっとそのためのアルバイトに明け暮れました。

A:その夢を実現するためのステップが、サイバーエージェントグループだったわけですね。

鈴木:第二新卒で入社しました。でも実は、マスコミによるその頃のIT企業に漂うキラキラ女子のイメージが苦手で。一度はお断りしようと思ったのですが、間に入っていただいたエージェントに、『鈴木さんが成長できる環境だから』と推されて、面接を受けまして。二次面接に進んだとき、当時波に乗っていた主力のウェブサービスについて「今のままでは将来的に他者と区別化ができなくなりますが、勝算はどこに?」と逆質問をしたのです。そうしたら役員の方が「それを考えるのが鈴木さんだよ、入社して頑張って」と。そのとき、この会社で勉強させていただこうと思いました。そして最終面接で「入らせていただきますが、起業するので29歳で辞めます」と宣言し、その場で内定をもらう結果に。今思えば、何も知らない弱輩者だったのですが(笑)。

A:5年半で学んだことは?