明治や大正、昭和初期に建てられた建造物には、現代の建物とは異なる魅力がある。DJ、モデル、ファッションデザイナーとして多彩な顔を持つMademoiselle YULIA(マドモアゼル・ユリア)が、そんな近代建築をナビゲート。今回は、上野公園にある国立国会図書館国際子ども図書館を訪問した。
国立の子ども図書館としての歩み
東京国立博物館や国立西洋美術館など、数々の名建築が並ぶ上野公園。ルネサンス様式の洋風建築とガラスのエントランスの対比が美しい堂々たる洋風建築が、国立国会図書館国際子ども図書館だ。
現在「レンガ棟」と呼ばれている建物は、明治39(1906)年に帝国図書館として建てられ、昭和4(1929)年に増築されたもの。当時の文部省の技官であった、官庁営繕の建築家、久留正道(くる・まさみち)を中心に、部下であった真水英夫(まみず・ひでお)らが設計した。そのとき、参考にしたのは、国立国会図書館のモデルにもなったアメリカの議会図書館や、ボストン公共図書館、シカゴのニューベリー図書館といわれている。
館内に入る前に、国際子ども図書館になるまでの変遷を。 戦後、国立図書館と名称を変え、昭和23(1948)年からは国立国会図書館支部上野図書館となり、運営されてきた。だが、1990年代には子どもの読書離れが加速。子どもの読書推進活動を支援する国立の児童書専門図書館として、平成12(2000)年に新たに開館した。それが国際子ども図書館だ。現在では、国内外の優れた児童書を読みに、また、建築を見に、たくさんの人々が訪れる。特に週末はにぎやかだ。
本を楽しむ子どものために設計された仕掛け
そのような経緯から、読書にふさわしい内装の工夫が随所に見られる。 1階「子どものへや」は、主に小学生以下を対象とした閲覧室だが、天井全面にLED照明を入れ、子どもたちが室内のどこにいても、影がでにくく、明るい環境で本を読める工夫がなされている。続く「世界を知るへや」には、国際理解を深めることを目的とした書籍が約2000冊並ぶ。
2階の「児童書ギャラリー」は、帝国図書館時代には特別閲覧室として、館長が特別に認めた研究者が使っていた。現在は子どもの本の常設展示を行っており、漆喰で仕上げられた4本の柱をはじめ、帝国図書館時代の室内装飾が復元されている。