明治や大正、昭和初期に建てられた建造物には、現代の建物とは異なる魅力がある。DJ、モデル、ファッションデザイナーとして多彩な顔を持つMademoiselle YULIA(マドモアゼル・ユリア)が、和洋折衷のスタイルや名建築家が手がけた近代建築をナビゲートする新連載がスタート。
日本の寺院との共通点を宿す、独特の存在感
羽仁吉一・もと子夫妻により大正10(1921)年に女学校として創立された自由学園。明日(みょうにち)館は自由学園誕生時の校舎であり、アメリカを代表する建築家の一人、フランク・ロイド・ライトとその弟子、遠藤新による木造建築だ。
池袋駅から歩くこと約5分。まず目に飛び込んでくるのは、中央棟を中心に左右にのびた東教室棟と西教室棟のシンメトリーな建物、そして広々とした前庭だ。高さを抑え、地を這うような佇まいはライトの第一期黄金時代の作風にも見られ、彼の出身地・ウィスコンシン州の大草原から着想を得たプレイリースタイル(草原様式)と呼ばれている。
「フランク・ロイド・ライトがとても好きで、明治村に移築された帝国ホテル中央玄関も見学に行きました。京都の平等院鳳凰堂をモチーフにしたといわれる帝国ホテルと同じように、明日館にも日本の寺院のような印象がありますね」とユリアさん。
「ライトが1893年のシカゴ万博の際に建設された日本の鳳凰殿を見て、参考にしたともいわれています。確かに低い建物は、日本の寺院を連想させますね。日本的な石である大谷石も多用しています」と解説してくれるのは、自由学園明日館広報担当の吉川紗恵さん。