明治や大正、昭和初期に建てられた建造物には、現代の建物とは異なる魅力がある。DJ、モデル、着物スタイリストとして多彩な顔を持つMademoiselle YULIA(マドモアゼル・ユリア)が、そんな近代建築をナビゲート。今回は、世界各国からの賓客を接遇する迎賓館赤坂離宮の後編。「朝日の間」「羽衣の間」、そして、噴水のある主庭をお届けする。
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迎賓館赤坂離宮の数多い見どころのなかでも、特に注目したいのが、和と洋の絶妙な調和だ。明治42(1909)年の創建当時の欧米の最新技術や流行を取り入れながら、和の意匠にもこだわった本館には、部屋ごとに異なる内装や華麗な装飾が満載。意表を突く和洋折衷は、維新から急速に近代化を成し遂げた明治期を代表する建築ならでは。
最も格式の高い「朝日の間」へ
「彩鸞の間」から大ホールを抜けて進むのは、要人の表敬訪問や首脳会談などが行われる「朝日の間」だ。国賓が天皇皇后両陛下とお別れの挨拶をする最も格式の高い部屋でもあり、入り口の両脇には昭和の改修時に描かれた小磯良平の油彩画が飾られている。内装はフランスのルイ16世様式。室内に入ってまっ先に目につく朝日を背にした女神の天井画は、100年以上も前にフランスの工房で描かれた絵画を、28人の専門家が25カ月を費やして修復したもの。絵画の周りを彩る金箔も丁寧に貼り直され、女神の威厳に華やかさを添えている。
「朝日の間」の四隅には大きな燭台が置かれ、床には桜花をモチーフにした手織りの緞通(だんつう)が敷かれている。この緞通は47種類の糸の色調の変化で桜の花を表しており、昭和の大改修時に織られたものを完全に復元するために、1271人の職人の手と1万時間以上を費やしたのだそう。柔らかくしなやかな風合いも備えていることから、日本で作りうる最高級の逸品といわれている。窓にかけられた深いグリーンのカーテンも、昭和の大改修時と同じ原料で、当時の織機を再現してまで復元したもの。多くの専門の職人たちの、丁寧かつ卓越した技術力の結集も「朝日の間」の大きな見どころのひとつといえる。