明治や大正、昭和初期に建てられた建造物には、現代の建物とは異なる魅力がある。DJ、モデル、ファッションデザイナーとして多彩な顔を持つMademoiselle YULIA(マドモアゼル・ユリア)が、そんな近代建築をナビゲート。今回は、世界各国からの賓客を接遇する国宝 迎賓館赤坂離宮を訪問。前編・後編の2回に分けてお届けする。

MADEMOISELLE YULIA
東京生まれ。DJやシンガー、着物のスタイリストとして活躍。国内外のコレクションのフロントロウを飾る、ファッションアイコンとしての顔も持つ。大正時代や歌舞伎、着物などに造詣が深く、ヴィクトリア&アルバート美術館で開催した「KIMONO展」メインヴィジュアルのスタイリングを担当。今年3月に日本の伝統文化を専攻していた大学を卒業。
http://yulia.tokyo/yulia/

都心に建つ明治の西洋風宮殿建築物

 明治42(1909)年に東宮御所として誕生して以来、日本で唯一のネオ・バロック様式の西洋風宮殿建築物として100年以上の歴史を刻んできた迎賓館-赤坂離宮。ジョサイア・コンドルの一番弟子として数多くの宮廷建築を手掛けた片山東熊が総指揮を執った本館は、建物の両翼を前方に張り出し湾曲させた威風堂々とした佇まいが特徴的だ。第二次世界大戦後は国に移管され、国立国会図書館、東京オリンピック組織委員会事務局などとして使用されたのち、昭和49(1974)年に迎賓館として開館。完成から110年を超えた今も、世界中から多くの賓客を迎えている。

石畳の前庭から本館を望む。建物の奥に抜ける広大な空を眺めると、都心の真ん中にいるのを忘れそうなほど。ベンチやカフェスペースもあるので、ゆっくりと鑑賞するのもおすすめだ。
石畳の前庭から本館を望む。建物の奥に抜ける広大な空を眺めると、都心の真ん中にいるのを忘れそうなほど。ベンチやカフェスペースもあるので、ゆっくりと鑑賞するのもおすすめだ。

「ずっと憧れていたので、参観できてとてもうれしいです」とユリアさんも語るように、通年での一般公開が開始されたのは平成28(2016)年4月から。参観順路は、賓客を最初に迎える正面玄関ホールからスタートする。玄関の扉からは真紅の絨毯が中央階段に向かって敷かれており、その動線を目で追うと、2階に広がる壮麗な大ホールがうかがえる。

2階の大ホールに向かう賓客は、皇室の菊の紋章と朝日が昇る景色を描いた天井画を見ながら階段を進む。
2階の大ホールに向かう賓客は、皇室の菊の紋章と朝日が昇る景色を描いた天井画を見ながら階段を進む。