書店で一度も行ったことのない棚へ行く

 こうして「不惑」をやる時に、大事なキーワードは「博学」です。

 まずお勧めしたいのは、大型書店に行くこと。店内を見渡すと、まず自分が行かないフロアや棚がありますね。あえてそこに行き、ちょっと気になった薄い本を1冊買う。読んでみる。多分理解できない。もう1冊買う。こうして3冊くらい読むと、全く興味がなかったはずの世界が見えてくる。そういう風にして、興味のない棚をどんどんなくしていく。

 無関心でいた棚にも、必ずワクワクする本があります。

 じつは僕、娘が小学5年の頃に離婚し、シングルファーザーになったんです。娘のために僕が料理を作らなくちゃいけないのですが、料理に全く興味がないので、ほぼ外食でした。ところが最近になって、これまで行ったことのない書店の棚の中で、土井善晴さんの一汁一菜の本と出合うんです。おや? これはなんだか面白そうだと引かれ、料理を始めたわけです。すると、とっても楽しい。大切なことは、読むだけではなく実践すること。

博学とは何でも知っていること、ではない

 博学の本来の意味は、なんでも知っていることではなく、一本ずつ田んぼに苗を手で植えていくこと。

 博学の「博」という字は、もともとは田圃の「圃」が右上にありました。下の「寸」は手を表すので、稲を手で植えるという意味。一つひとつ植えていきます。また、「学」の昔の字は「學」で上の両サイドにあるのが手、中央にある2つの「メ」が「まねる」を意味します。師が弟子の手足を取りながら教え、まねをさせることが「學」。

 つまり一つひとつ着実に学んで実践し、初めて「博学」になるというわけです。近ごろはネットでも多様な講座が受けられます。全く興味がないジャンルの講座を受けてみるのも手。でも、自分がワクワクするものしか選んではいけません。

 僕は昨年、コロナの影響で舞台がなくなった期間、Unity(ゲーム開発プラットホーム)のプログラム言語をネットで勉強しました。もともと3DCGは作れるんですが、VR空間も自分で作れるようになろうと思って。やってみると簡単にできるようになるんですよ。それも授業料2000円とか3000円とかで。

 ね、ワクワクしますでしょう?

 孔子は、「五十にして天命を知る」と書いています。まだ自分が何をしたいか見つからないという人は、当たり前。

 だって、孔子ですら五十ですから!

取材・文/さくらいよしえ 写真/鈴木愛子