男性社会の中で働く女性のさまざまな生きづらさを発信してきたARIA。ふと見ると、「男らしさ」を求められてきた男性たちもモヤモヤを抱えている様子。その正体は何なのでしょうか。この連載では、男性学の研究者、田中俊之さんに男性ゆえに生まれる生きづらさや葛藤の原因をひもといてもらいます。今回のテーマは、「男の子の育て方、女の子の育て方」です。

「男の子は男らしく」という子育て論は減ってきたが…

 昭和の時代に比べ、「男の子は男らしく」「女の子は女らしく」育てるという風潮は減る傾向にあります。男女共同参画白書で子どもの性別による子育ての考え方を聞いた調査によると、1972年には「男の子は男らしく、女の子は女らしくしつけたほうがよい」と考える人が女性74.8 %、 男性78.3%でしたが、2014年には女性40.4%、男性64.1%に減っています(同白書2019年版)。

 SDGsにもジェンダー平等が掲げられ、「男の子らしく」「女の子らしく」を押しつけるものではない、という理解は広まってきたと思います。が、実際に自分の子どもの場合どうか。男の子を育てる親から聞くのが、「子どもが競争に勝てなくなったら困る」という声です。

 男の子は「競争に勝つ」ことを重視して育てられてきました。男はなんだかんだいっても競争に勝って高い業績をあげれば高い地位につけるという分かりやすい構図ができています。例えば、いい高校に入り、いい大学に入るという学歴は一生ついてまわる。そういう分かりやすい価値を手にいれてほしいと、親は子どもに望みがちです。

 僕は2児の父親ですが、保育園でも子どもが駆けっこしたときに「負けるな」「男の子だから頑張れ」と声をかけてしまうパパたちはいます。子どもがやんちゃな行動を取ったときも、男の子になら肯定的なニュアンスで言われることが多いと感じます。

「競争に勝つ子に育ってほしい」と男の子に期待をかけがち
「競争に勝つ子に育ってほしい」と男の子に期待をかけがち