男性社会の中で働く女性のさまざまな生きづらさを発信してきたARIA。ふと見ると、「男らしさ」を求められてきた男性たちもモヤモヤを抱えている様子。その正体は何なのでしょうか。この連載では、男性学の研究者、田中俊之さんに男性ゆえに生まれる生きづらさや葛藤の原因をひもといてもらいます。今回は「独身男は生きづらい」問題です。

50歳男性の4人に1人が未婚という現実

 結婚しない男性が増え続けています。7年前の数字ですが、50歳時の未婚率は男性が23.4%、女性は14.1%(国立社会保障・人口問題研究所調査)。50歳の時点で4人に1人が一度も結婚していないという状況です。50歳まで未婚の人が、その後に結婚する割合がとても少ないことから、かつては「生涯未婚率」とも言われました。

 50歳の時点でこれだけの人が未婚でいるなら、30代40代も含め世の中の独身男性はかなりの数がいる。もはや独身男性はマイノリティーではないはずです。しかもNHK放送文化研究所の調査では約7割が「必ずしも結婚する必要はない」と答えている。

 にもかかわらず、独身男性はよく「なんで結婚しないの?」と聞かれます。独身でいるのは何か特別な理由があるはずだと思われている。結婚していないことに疑問を持つこと自体、「結婚はして当たり前」という考えの押し付けではないでしょうか。

 パワハラやセクハラに敏感な昨今、女性に独身いじりをする人はまずいません。でも、男性はどうでしょう。「こいつまだ独身なんだよ」と軽口をたたかれ、独身いじりが許される雰囲気がありませんか。

 「太っている」「はげてる」のような見た目いじりも含め、おじさんいじりは許容されている面がまだ日本にはあると思います。今はさすがに言われませんが、昔は会社でも「男は結婚して一人前」と言われたものです。これらは性別に対する固定観念に基づいた嫌がらせであるジェンダーハラスメントの典型なんですが、男性に対するジェンダーハラスメントは、なかなか意識されていません。