男性社会の中で働く女性のさまざまな生きづらさを発信してきたARIA。ふと見ると、「男らしさ」を求められてきた男性たちもモヤモヤを抱えている様子。その正体は何なのでしょうか。この連載では、男性学の研究者、田中俊之さんに男性ゆえに生まれる生きづらさや葛藤の原因をひもといてもらいます。今回は、「友達がいない」問題です。

悩みごとを相談できる相手は「いない」4割

 一般的に、女性に比べて男性は友人が少ないという印象があると思います。学生時代は男女共にたくさんの友人がいたはずなのに、中高年になると職場の仲間以外の人と出かける男性はあまり多くない。これは調査でも明らかになっています。

 例えばメールやSNSでやり取りをする友人が20人以上いる割合は、18~29歳ではほぼ男女差はありませんが、30代、40代になると女性より10%ほど低くなり、50代になると男性は「いない」が31%に上ります。

 さらに、友人の中でも「悩みごとを相談できる」相手は、男女共に2~3人ぐらいが多いようですが50代以上の男性では「いない」が4割近くになっています。とりわけ70歳以上の男性では「いない」が53%と半数以上を占めます。

女性よりも男性のほうが、悩みごとを相談できるような友人は「いない」が多い 出典/「社会的ネットワークと社会的資源」2017年、ISSP国際比較調査
女性よりも男性のほうが、悩みごとを相談できるような友人は「いない」が多い 出典/「社会的ネットワークと社会的資源」2017年、ISSP国際比較調査

 年齢が上がるほど男性は孤立を深めていきます。一人で暮らす65歳以上の男性では、15%もの人が軽い日常会話の頻度が2週間に1回以下であるとの調査データもあります(国立社会保障・人口問題研究所「生活と支えあいに関する調査2017年」)。

 女性では同じ条件でも、わずか4.4%にすぎません。男女で10ポイント以上も差があるのです。これでは体調が悪くなったとき、助けを求めたり、相談したりすることも難しい。会社員時代は毎日、顔を合わせていた同僚も、退職してしまうと疎遠になり、人との関係性が希薄になっていきます。

 なぜ男性は友達が少ない傾向にあるのか。その原因の一つは第1回でも触れた「育てられ方」の違いにあると思います。