大切な家族が導いてくれた

 パートナーが転勤がちだったり、自身の親きょうだいや子どもが病気になったり介護が必要になったりしたために、キャリアを見直す必要に迫られる人たちがいます。大きく変わったキャリアについて、どう思っているのでしょうか。

小さい子を2人抱えてベンチャーで働くという、自分の仕事人生で一番大変な時期でした。夫に対しても「なんで私ばっかり思い切り働けないんだろう」と恨めしく思っていて。病気が分かる前から、気持ちの上でいい状態ではありませんでした。そんなときに息子の病気が分かって。(中略) すごく残念なんだけど、人生の区切りが来たんだなと。不思議な感じですが、これから人生が変わるんだな…という感覚でした。


市原明日香(モデラート代表取締役)

息子の白血病でキャリアを断念 そこから開けた新たな道


夫の海外転勤に伴って何度も米国と日本を行ったり来たりしてきました。3度目の海外転勤のときは、「今後10年間は駐在することになる」と言われてついていったのですが、1年半で急に辞令が出て帰国。子どもたちも引っ越しと転校を繰り返してつらい思いをしていたので、何もできない無力な自分にものすごく怒りが湧いて。理不尽な人事異動に振り回される生き方に嫌気がさし、自分の人生は自分でハンドリングしたいと思った。


塚田志乃(VANSO代表取締役、広報・PRプロデューサー)

気がつけば専業主婦歴15年 43歳で起業という選択


(初の女性営業職として仕事にまい進していた入社1年目、19歳の弟が骨髄のがんに侵されていることが分かった。)治療には白血球の型が合う骨髄を移植する必要がありました。その確率は4000~5000人に一人といわれ、家族はただただ悲観に暮れていましたが、その中でも私は「できることがあるならやろう」と適合者を探すために骨髄を集めることを考え始めていました。


葭野一恵(ヨシノスペースデベロップメント 代表)

弟の死により家業を継承 夫の反対を押し切り代表就任


次女は生後すぐに手術を受け、そこから入退院を繰り返しました。つきっきりで看病しましたが、1歳を目前に控えたときに容体が急変し、息を引き取りました。(中略) たった11カ月だったけど、彼女は使命を終えたから帰っていったんじゃないかって感じるようになったんです。私は彼女からのメッセージを受け取った、生きた意味を形にしたいと思いました。


光原ゆき(NPO法人キープ・ママ・スマイリング 代表)

生後11カ月で娘が他界 引き受けた使命を胸にNPO設立


構成・文/日経xwoman ARIA