仕事との向き合い方が変わった

 多くの犠牲が払われた震災を目の当たりにして、仕事の進め方や、さらには仕事や会社のあり方までも、改めて考え直すことになったという人たちもいます。経営者の高橋ゆきさんは、自分の存在が社内で大きすぎることが企業としてのリスクではと考え、自らと会社のあり方を変えようとしました。すご腕の宣伝マンである星野有香さんは、人生の終わりがいつ訪れるとも分からないと考え、転職を決意します。

「ずっと社会貢献活動への思いを抱えていた独り者の私が行かないで、いったい誰が支援に行くんだ」と。時が来た、と思ったんです。すぐに休暇を取り、リュックを背負って石巻に2週間行きました。ボランティア活動をしたら、思いの外、私の能力が活用できることが分かったんです。例えばコミュニケーション能力。もともと年配の方と話す機会が多い仕事ですから、5分とかからずに年配の被災者の方が困っていることを聞き出せたんです。「日本一忙しい支店」で培った臨機応変な対応能力も大いに役立ちました。


山崎直子(UBS銀行 東京第一営業本部部長)

凄腕バンカーが天職を得るまで お茶くみ入社からの躍進


東日本大震災という未曽有の災害が起きて、「ベアーズという企業のリスクってなんだろう?」と考えた時、「一番のリスクは私かもしれない!」と、はたと気付いたんです。私という存在がいるから、会社や組織が活気づく。事業も伸びていく……。もし、そうだとしたら、企業体としてリスクが大きいなって。サグラダ・ファミリアみたいに次世代まで脈々と創造の情熱が受け継がれていくような企業を目指していたので、「ここで経営者としての自分の在り方を変えなければいけない」と本気で思いました。


高橋ゆき(ベアーズ 取締役副社長)

高橋ゆき 専務から副社長へ、トップとしての働き方改革


世界が一瞬にして変わる、人生があっという間に終わるということを目の当たりにし、これまでと違うことを考えてみようという思いが芽生えました。最終的には、そろそろ宣伝マンとして次のステージに挑むタイミングかも、と考えて転職を決意しました。全国区の大作を多く手掛けるメジャー系のパラマウントに転職した時、恐らく周囲の人はいぶかしがっていたんですよ。「インディ系から来た人に何かできるの?」って。でも、私はそういう状況での仕事が一番好きなんです。


星野有香(20世紀フォックス 映画マーケティング本部長)

大ヒット「ボラプ」仕掛け人は、逆境で燃えたぎる系