東日本大震災から10年。あの日のことは多くの人の記憶に今も鮮明に残っていることでしょう。地震による被害や社会・経済の混乱を直接経験した人、復旧や復興の陣頭指揮に当たった人、遠く離れた地からの支援に奔走した人――。それぞれの「あのとき」を記事で振り返ります。※所属や肩書は取材時のものです

支援や復興の第一線で戦った

 壊滅的な被害を受けた東北で貨物輸送の復興を陣頭で指揮したのが、当時JR貨物の東北支社長だった真貝康一さん。関係各所との調整し、気持ちと力を一つにしての共同作業により、驚くほど短かい期間での復興が実現しました。一方、医療従事者として地震があった翌週には現地に入った医師の吉岡春菜さんは、現地でもどかしい経験をし、それがコロナ禍での行動につながったといいます。

毎日毎日、線路一つひとつに異常がないか点検する人。コンテナに異常がないか、貨物列車が出発する前に点検する人。線路が災害で流されたら、すぐにかけつけて復旧作業をする人。そういう地道なオペレーションの結晶が貨物輸送です。震災復興の経験を通して、一人ひとりがその気持ちを強くしたでしょうし、だからこそ力を一つにして、再びレールをつなぐことができたのだと思います。


真貝康一(JR貨物代表取締役社長)

音楽がもつ調和の力は物流事業でも生きる JR貨物社長


当時、私たちは医療支援のために震災発生の翌週に現地に入っていたのですが、現地で目の当たりにしたのは「足りない物資が実際に届き始めるまでの時差」の問題でした。ニーズを発信し、やっと各地から物資が集まってくる頃には「もう間に合っている」というもどかしさ。必要な時にすぐに必要なものを届ける仕組みが重要なのだと、実感したんです。


吉岡春菜(医師/ジャパンハート理事長)

ジャパンハート吉岡「医療者を守る!コロナ対策に奔走」