2007年に『殯(もがり)の森』でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞するなど、世界的に高い評価を受ける映画監督の河瀬直美さん。昨年は東京2020オリンピック大会公式映画の監督に就任したことも話題になった。「正しい生き方なんてない」と話す河瀬さんは今年50歳。まさに人生の中央地点に立つARIA世代の河瀬さんが、同世代に送るメッセージとは。

40代で仕事を振れるようになり、幅も奥行も広がった

―― 2014年の『2つ目の窓』以降、15年『あん』、17年『光』、18年『Vision』と、近年、精力的に作品を発表しています。

河瀬直美さん(以下、敬称略) 今年、50歳を迎えますが、40歳からの10年間は劇映画を中心に作品を撮るタイミングが続きました。パリで『2つ目の窓』の編集作業を終えた翌日には、東京に戻ってすぐに樹木希林さん主演の『あん』の撮影。それくらい立て続けに撮っている感じです。

 年を重ねてもアイデアは全く衰えていないし、多くの出会いがあればひらめきも湧いてくる。多作になった一番の理由は、同じ方向を向く仲間やスタッフが増えたこと。全部を自分がやらなくても仕事に広がりが出るようになったことが大きいですね。

 20代の頃はがむしゃらにすべて自分一人でやっていたから、すごく時間もかかるし、大変でした。でも、40歳になった頃から仕事を他人に振れるようになったんです。私がやらなくても代わりにスタッフがやってくれる。私はスタッフから返されたものをベースに、もっともっと深いところまで掘り下げることができるようになりました。

故郷の奈良を拠点に活動する河瀬さん。カンヌ国際映画祭グランプリを獲得した『殯の森』、最新作のジュリエット・ビノシュ主演日仏合作映画『Vision』も奈良が舞台

―― 仕事を自分で全部抱えてやってきた人ほど、他人に仕事を振る怖さもあると思うのですが。

河瀬 怖かったですよ。30代の頃はまだ他人に仕事を振れずにいました。