2007年に『殯(もがり)の森』でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞するなど、世界的に高い評価を受ける映画監督の河瀬直美さん。昨年は東京2020オリンピック大会公式映画の監督に就任したことも話題になりました。「正しい生き方なんてない」と話す河瀬さんは今年50歳。まさに人生の中央地点に立つARIA世代の河瀬さんが、同世代に送るメッセージとは。連載最終回は、「最後まで女優だった」樹木希林さんとの思い出と、最後の電話でもらった言葉、子育てについて語ってくれました。

私を変えた34歳での出産。公開初日は息子と映画館へ

―― 映画を撮り続ける中で、ターニングポイントになった出来事はありますか。

河瀬直美さん(以下、敬称略) 子どもを産んだことですね。34歳で出産したのですが、それまで生きてきて、こんなに心強いと思うことはなかった。自分の命の尊さにも触れ、世界のしくみや歴史や文化など、自分とは遠いように感じていた物事がすべては自分の足元とつながっていると気付いた。生き直させてもらえているような感覚を得たり、気持ちがおおらかになったり。

 私にとって、作品作りの一番のパワーは子どもです。本当に生んでよかったと思うし、子どもの存在があることは私の間違いないパワーになっているので。どんなことがあっても、その子が私の近くで眠りについていることは、ものすごく幸せなことで力強いこと。

 子どもは思い通りにならない。他者ですから。だから、その子がやりたいこと、欲求を見つめることが大事。それはスタッフに対しても同じことなんですよね。どんなに私が頑張っても、他人だからコントロールはできない。私ができることといえば、いいところを引き出し、適材適所に配置すること。彼らの得意なところを見る。できないことより、できているところを見つけるようになりました。見守る、に近いかな。

―― 普段は子どものお弁当作りをしていますか?

河瀬 作りますよ。今、息子は中学3年生。毎朝お弁当を作っています。息子曰く「15分でちゃちゃっと作っている」と(笑)。私の映画作品? 見てくれています。公開初日は一緒に映画館に見に行きます。

河瀬さんを変えたのは、34歳の出産。生き直させてもらえているような感覚を得たり、気持ちがおおらかになったり。子どもが作品作りの一番のパワーになっている