2007年に『殯(もがり)の森』でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞するなど、世界的に高い評価を受ける映画監督の河瀬直美さん。昨年は東京2020オリンピック大会公式映画の監督に就任したことも話題になりました。「正しい生き方なんてない」と話す河瀬さんは今年50歳。まさに人生の中央地点に立つARIA世代の河瀬さんが、同世代に送るメッセージとは。連載第3回は、44歳、奄美大島でのターニングポイントについて語ってくれました。

自分自身にとっての最高傑作は『2つ目の窓』

―― これまで数多くの作品を撮っていますが、ご自身で納得できた作品はありますか?

河瀬直美さん(以下、河瀬) カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した『殯の森』に関しては、養母の介護とまだ幼い息子の育児に追われながら、とにかくがむしゃらに作り上げた作品です。本当に納得がいったという意味では、その次に手掛けた『2つ目の窓』(2014年)かな。

―― 『2つ目の窓』では河瀬作品で多く登場した奈良を離れ、奄美大島が舞台になりましたよね。

河瀬 いつもは森で撮影することが多いのですが、この作品では初めて海で撮影しました。私のルーツが奄美大島にあったと知ったこと、養母の死に対面した後でもあって、どこかぬくもりを求めて、奄美大島に行きました。

 でも、それまで中心となって協力してくれた仲間のうちの2人が撮影前にいろいろな感情のズレがあって、私の元を去ってしまった。別れですね。以前ならば、そんな経験をしたときは「もうダメだ」「もうやめよう」と、とことん落ち込んだと思うんです。

河瀬さんのルーツは奄美大島にある。『2つ目の窓』の主演・村上虹郎はこの作品がデビュー作になった