世界の最先端を体感できる都市、ニューヨーク。この街に1996年から在住し、ビジネス・コンサルタントとして第一線で活躍する渡邊裕子さんの最新リポートをお届けします。

 11月1日にアメリカ国内の少数の劇場で公開(日本では11月15日から全国順次公開)されたマーティン・スコセッシ監督の25作目の映画『THE IRISHMAN(邦題、アイリッシュマン)』。本作品は、彼の原点であるマフィアの世界を描いた久々の大作、かつロバート・デニーロ、アル・パチーノという2大ベテラン・スターの競演ということもあり、公開前から注目を集めていた。

THE IRISHMANがメディアで大きく報道されている理由は、作品の中身以外にも理由があった
THE IRISHMANがメディアで大きく報道されている理由は、作品の中身以外にも理由があった

 この作品が注目されたのにはもう一つ理由がある。公開を前に、この3時間半の大作をプロデュースしたNetflix(ネットフリックス)と、大手映画館チェーンの争いがメディアで広く報道されていたからだ。

常識を覆したNetflixに、映画業界が猛反発

 通常、これだけ鳴り物入りの作品が公開される場合、少なくとも最初の2~3カ月間は、劇場のみで上映される(ストリーミングはその期間が過ぎた後に開始)というのがこれまでの暗黙の了解だった。しかし、Netflixは映画業界の常識を覆し、今回は劇場公開のわずか3週間後からストリーミングを始めると主張した(結果的には、映画公開の26日後からストリーミングが開始された)。Netflixにとっては、劇場で不特定多数の観客に見られることよりも、自社のサービスにお金を落としてくれる会員に最新話題作へのアクセス権をいち早く与え、顧客満足度を上げる方が重要だからだ。

 映画館チェーン及び古くからの業界関係者は、こうした動きに対し「スコセッシは、映画館で育ち、映画館で有名になり、映画館の大画面で見られるべき映画を作ってきた映画人だ。そんな監督の作品をさっさとストリーミングに流してしまうなんて」と強く反発した。