世界の最先端を体感できる都市、ニューヨーク。この街に1996年から在住し、ビジネス・コンサルタントとして第一線で活躍する渡邊裕子さんの最新リポートをお届けします。

 2020年9月18日夜、友人たちから筆者に続々とメッセージが届いた。「RBG(ルース・ベイダー・ギンズバーグ米連邦最高裁判所判事)が亡くなった」というニュースだった。ツイッター上では、彼女の死を嘆き悲しむ「No. No. No.」というワードがトレンド入りし、100万回以上ツイートされていた。

 RBGが膵臓(すいぞう)がんを患っていることは広く知られていたし、87歳という高齢を考えれば、亡くなったことは驚くべきことではない。でも、彼女はこれまでにも病気やけがと闘って、そのたびに復活してきた。だから我々も「彼女は簡単には死なない。あの強靭(きょうじん)な意志の力で、また病気から生還するに違いない」と期待していた。

9月18日、RBGことギンズバーグ判事の死が報じられると、米国中で悲しみの声があふれた。写真は2017年1月、「女性のマーチ」のときのもの。RBGは両性の平等のアイコンだった
9月18日、RBGことギンズバーグ判事の死が報じられると、米国中で悲しみの声があふれた。写真は2017年1月、「女性のマーチ」のときのもの。RBGは両性の平等のアイコンだった
9月18日、RBGことギンズバーグ判事の死が報じられると、米国中で悲しみの声があふれた。写真は2017年1月、「女性のマーチ」のときのもの。RBGは両性の平等のアイコンだった

一人の人間の生死が、なぜ米国にとって重要なのか

 米国で暮らす多くの人々(リベラル層だけではなく、中道も含め)にとって、彼女が大統領選挙7週間前というタイミングで亡くなることは、最も恐れていたシナリオだった。来年1月まで、せめて11月の選挙が終わるまで、願わくはドナルド・トランプ大統領の退任が決まるまでは、彼女に頑張って生きていてもらいたいと祈っていた人は筆者の周りにもとても多かった。

 なぜ、それほどまでに一人の人間の生死が米国にとって重要なのか。理由はいくつかあるが、最も重要なポイントは、彼女の死によって空いた判事の席をトランプ大統領が保守派の判事で即座に埋めようとするであろうことだ。米連邦最高裁判事は、大統領が任命し、上院によって承認される。現在、共和党が多数を占める上院は、トランプ大統領が指名した人物をそのまま承認するだろう。そうなれば、最高裁判事の数はこれまでの「保守5」「リベラル4」から、「保守6」「リベラル3」の比率に変わる。

 最高裁判事は終身で、大統領にすら解雇されない。誰かが亡くなったり引退したりしない限り、席は空かないのだ。次に最高裁の席が空くのはいつか分からないので、もし保守派が大多数の最高裁になった場合、そのバランスを再度変えるには、数十年かかる可能性がある。