世界の最先端を体感できる都市、ニューヨーク。この街に1996年から在住し、ビジネス・コンサルタントとして第一線で活躍する渡邊裕子さんの最新リポートをお届けします。

 前回記事「米国のミュージアムは、白人至上主義の象徴か?」では、Black Lives Matter(BLM)運動に伴い、米国の美術館・博物館の組織経営が、大きな変革を迫られている実態を解説した。芸術機関のマイノリティー・スタッフたちが横に連帯するという業界ぐるみの動きも、大きなうねりとなっている。

NYの文化機関は「白人至上主義に根差している」

 2020年6月20日に「ニューヨークの文化機関への公開書簡」が発表された。これは、メトロポリタン美術館、メトロポリタン・オペラ、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、グッゲンハイム美術館はじめニューヨークを代表する文化機関で今働いている、あるいはかつて働いていた黒人および「ブラウン」(ヒスパニック、中東系、インド系などをはじめとする有色人種)のスタッフたちによる連名の手紙だ。匿名の人もいれば、名前を出して署名している人たちもいる。内容は、これらの歴史ある文化機関において長い間行われてきた人種差別、不公平な職場のあり方を痛烈に糾弾し、その是正を要求するものだった。

 手紙は「われわれは、これらの文化機関における黒人および有色人種スタッフに対する不公平な扱いと、一貫して行われてきた搾取に対する怒りと不満を伝えるために書いています」という強い言葉で始まる。そして、これらの機関が白人至上主義に根差し、マイノリティーを搾取してきたと指摘する。

 その上で、「私たちがずっと現状に我慢していると思ったら大間違いです。白人至上主義は終わりです」「あなた方の組織内にはびこる人種差別を隠そうとするための調査やディスカッション、なんとか委員会などといった空々しい努力はもうたくさんです」と述べ、その代わりに何をすべきか具体的な要求をリスト化している。

 そこには、有色人種をもっと雇用することや、人種差別をなくすためのトレーニングを設けることに加え、組織内の意思決定層や理事会に白人以外のメンバーを増やすこと、Chief Diversity Officer (組織の多様性を達成するための最高責任者)を任命すること、展覧会はじめプログラムの内容、所蔵作品を見直し、白人中心主義から脱却すること、白人とそれ以外のスタッフの間にある報酬の不平等を是正することなどが含まれている。

メトロポリタン・オペラ(左写真)やグッゲンハイム美術館(右写真)などニューヨークの文化機関へ公開書簡が送られた
メトロポリタン・オペラ(左写真)やグッゲンハイム美術館(右写真)などニューヨークの文化機関へ公開書簡が送られた
メトロポリタン・オペラ(左写真)やグッゲンハイム美術館(右写真)などニューヨークの文化機関へ公開書簡が送られた