世界の最先端を体感できる都市、ニューヨーク。この街に1996年から在住し、ビジネス・コンサルタントとして第一線で活躍する渡邊裕子さんの最新リポートをお届けします。

 2020年5月末から全米で続いている Black Lives Matter(BLM)運動に対し、米国の経済界がどのような反応を見せているか、それがなぜなのかについては、前回述べた(「人種差別に対し、なぜ米企業は強いメッセージを出すのか」)。

 今回の運動に敏感に反応しているのは、大企業だけではない。学校(小学校から大学まで)、地方自治体、軍、スポーツチーム、文化芸術機関などが、この2カ月でさまざまな動きを見せている。そして、その発信内容や行動が原因で、さらに新たな議論を巻き起こしているケースも少なくない。

急速に進む「差別の象徴」の撤去

 現在、米国各地では、奴隷制度を支持していた南部連合のリーダーたちの像や記念碑を、差別の象徴として撤去する動きが急速に進んでいる。アラバマ州、ケンタッキー州、バージニア州などで、南軍司令官リー将軍、南部連合初代大統領ジェファソン・デイビスなどの像が撤去され、オレゴン州では、奴隷の所有者だった初代大統領ジョージ・ワシントンの像に火が付けられ、引き倒された。この1カ月余りでデモ参加者に破壊されるか、当局が撤去したものは全米で40件以上に上る。

 6月10日には、米カーレース最大手のNASCAR(ナスカー)が会場での南軍旗の使用を禁止すると発表。ディープサウスと呼ばれる米南部の保守的な地域で発祥し、主に白人の間で人気のスポーツであるナスカー主催者側にとっては、これは勇気のいる決断だったに違いなく、大きな話題になった。

 7月13日には、NFLのフットボールチーム、ワシントン・レッドスキンズが、かねて先住民差別だと批判されてきたチーム名とロゴを変更すると発表。レッドスキン(赤い肌)は、先住民を指す言葉として過去には日常的に使われていたが、先住民の権利擁護団体が「蔑称に当たる」と主張し、長年議論の対象になってきた。

 このように「人種差別を肯定するようなものは、片っ端から撤廃していこう」という流れは勢いを増し、今や、ありとあらゆる組織が、内在する差別や偏見と向き合い、改革を迫られている。とりわけ、今、重要なターゲットになっているのが、ミュージアムをはじめ、文化芸術機関だ。

ニューヨークのあらゆる文化芸術機関から、人種差別を肯定するものを撤廃する動きが始まった。写真は、メトロポリタン美術館
ニューヨークのあらゆる文化芸術機関から、人種差別を肯定するものを撤廃する動きが始まった。写真は、メトロポリタン美術館