総務省統計局の「人口推計」によると、2020年10月1日現在の日本の総人口(概算値)は1億2588万人。2015年の国勢調査からの5年で約121万人も減少しています。少子高齢化が進み、人口減少の一途をたどる日本。それによるひずみは「人手不足」など、私たちの身近なところにも影響を及ぼし始めています。今一体何が起きているのか。人口が減少する日本の未来はどうなってしまうのか。人口減少対策総合研究所理事長 河合雅司さんが解説します。

(1)人手不足がチャンスに?「生涯現役が当然」の時代が到来
(2)「待機老人」が今後増える? 家族を待つのは過酷な未来
(3)老後に必要なのは2000万円の貯蓄ではなく○○○○○ ←今回はココ

年金=長生きし過ぎることへの保険?

―― 「人手不足がチャンスに?『生涯現役が当然』の時代が到来」で、「年金という制度は、老後が40年あるという設計でつくられたものではない」とおっしゃっていました。そもそも今後きちんと年金が支給されるのかということに、不安を感じています。

河合雅司さん(以下、敬称略) 年金は公的な社会保障制度なので、支給されないということはありません。ただ、「マクロ経済スライド(※)」によって少なくなることはあります。また、給付水準も低くなる可能性があります。年金を受け取り始める時点(65歳)の年金額が現役世代の手取り収入額と比較してどのくらいであるかを示す「所得代替率」という数字がありますが、現在の受給者が60%以上なのに対して、将来的には50%くらいになるかもしれません

(※)マクロ経済スライドとは、2004年の年金制度改正によって導入された、賃金や物価の改定率、現役の被保険者の減少、平均余命の延びに応じて年金給付水準を調整する仕組みのこと

―― 今より受給額が減ってしまうんですね……。

河合 その時々で社会のありようは変わるので、今と未来で単純な比較ができないのが難しいところです。例えば同じ10万円でも、現在と30年後とでは、その「価値」は変わりますよね。

 そもそも公的年金は、老後生活の主柱ではありますが、すべてを保障するものではありません。年金というのは「長生きし高齢で収入が得られなくなったときのための保険」です。今後長くなる老後の生活を年金だけで賄うのは、到底無理な話なのです。年金受給額で足りない生活費は、自分で工面しなければなりません。昔の人も、年金だけで生活を成り立たせていたわけではありません。年金に加えて、蓄えの切り崩し、子どもからの援助などで生活していたのですが、今より老後が短かったために何とかなっていただけなんですよね。