未経験部門の長になることで部下を信頼する力をつける

―― その後、ダイレクト企画部長を経て、執行役員に就任したのが2009年(45歳)。この間、どのようにマネジメントスキルを獲得していったのでしょうか?

田代 マネジメントスキルの獲得の仕方には正解はありませんし、人それぞれだと思います。私の場合は、超ジェネラリスト型。債券部門に行ったり、リテール部門に行ったり、IRを担当したり。専門職化するキャリアを歩む人が多い金融業界では珍しいタイプだと思います。つまり、“未経験の部門で長になる”という経験を私は繰り返してきたんです。

―― プレーヤーとしての経験がない部門でマネジメントをする。どのようにリーダーシップをとっていったのでしょうか?

田代 部下を信じて任せる。これしか選択肢はありませんでした。私よりはるかに業務に詳しく優秀な部下たちがそろっているのですから、「頑張ってね。応援するから」「何か困ったことがあったら言って」とエールを送るくらいしかできません。債券部門に異動したときのあいさつでは、「私は債券の細かいことは分かりません。私をだまそうと思ったらだませます。でもだまさないでね」と冗談を言ったのを覚えています。

―― 部下の方々を信じて任せるリーダーシップによって、チームがより活性化されたのではないでしょうか。

田代 いろいろな見方はあるとは思いますが、私自身の考えとしては、上司が部下より細かい業務を知り過ぎていることはやりにくい部分も多いと思います。だって、何か提案してもすぐに指摘されそうじゃないですか。むしろ上司が「分からないから教えて」と構えるくらいがちょうどいい。

 それに、私の場合は会社の意図をポジティブに解釈していたんです。「何も知らない私をここに据える。会社がそういう人事を決めたのならば、今までと違うやり方を期待されているに違いない」と勝手に都合よく解釈して、あまり肩肘張らずに自分ができることをやってきました。別に直接聞いた訳ではないですよ。でも、そういうものなのかなと。結果、のびのびとやらせてもらってきたのではないかと思います。