組織はマネジメント次第、リーダーの役割の大きさを留学で実感

―― どんな学びを得られたのですか。

田代 1つは、社会の多様性を実感できたことです。留学先の同級生は職業も国籍もバラバラで、ルームメイトにはLGBTQの人もいました。世界を構成する人たちは多様であり、ビジネスや組織づくりを考える上でも欠かせない視点だと学びました。

 もう1つは、やはりマネジメントの重要性です。事業の成否を方向づけるのはマネジメント次第であり、リーダーが担う役割は大きいのだと認識するようになりました。

―― 田代さんが理想としてきたリーダー像は?

田代 「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえるリーダーになりたいというイメージはありましたね。

 私が初めて部下を評価する管理職になったのは2004年(40歳)にIR室長になったときでした。それまでもプロジェクトチームをまとめるリーダー経験はしてきましたが、部下を評価する立場になるというのは、階段を1つ上がるような経験。自分がその立場になって初めて見えたことはたくさんあって、「予算を考えたり、人を評価したり、部室長って大変だな」と感じたのを覚えています。

―― 「マネジメントの重要性を20代の留学で学んだ」とおっしゃいましたが、実際にその立場になったときに、ご自身はどうやってマネジメントスキルを磨いていったのでしょうか?

田代 私の場合はずっと上司に恵まれ、その時々の成長段階に応じたサポートを受けてきました。若い頃の上司は失敗に対して寛容で任せてくれるタイプの上司で、「トライして失敗するのは仕方がない。次は同じ失敗をしないようにすればいい」と励ましてくれました。

 部長になる直前の上司は、何か意思決定の相談をするたびに「オプションをすべて考えたのか?」と問いかけてくるタイプ。「本当にできないのか? 前例や慣習にとらわれず、いろいろな手法を検討した上での結論なのか」と。この問いは、今でも私の指針になっています。