個人の強みを組み合わせてチームの結果につなげる

―― 管理職になってからは何を意識して、どのように取り組んでいきましたか?

野坂 学位論文は研究職としての仕事でしたので、そこからどう事業に貢献していくかを、チームで知恵を絞って開発を進めていきました。管理職だからということはあまり意識しませんでした。目の前にある課題をどう乗り越えていくかを常に考えていました。

 基本的に新人であれ誰であれ特有の強みがある。そこをプラスし合えばチームとしてのパフォーマンスは上がると実感していました。個人の特徴を組み合わせてチームとしてのパフォーマンスをどう上げるかということは常に考えていました。

―― 45歳のとき、上海味の素食品研究開発センターの総経理(社長)として赴任されました。100人以上の社員を束ねる海外法人のトップになるという重責を担うポストを提示されたときはどのように感じましたか。

野坂 グループの小さな会社であっても社長業をやるような自信はないと思って、本当に受けていいだろうかと悩みました。ただ前任者とは日本にいるときから副総経理(副社長)を兼務しながら一緒に仕事をしていましたし、グループ会社として立ち上げから携わってきた。初めて研究所から外に出るという辞令だったので、このままずっと中にいるよりは外に出て挑戦してみようと思いました。

「イタリアでの経験がなかったら海外法人のトップは怖くて受けられなかったかもしれませんね。自信はないけれど、なんとかなると思えた」
「イタリアでの経験がなかったら海外法人のトップは怖くて受けられなかったかもしれませんね。自信はないけれど、なんとかなると思えた」

 こうした大きなチャンスは、上の人がよく考えて辞令を出していることなので、素直に受け入れて挑戦するほうがいい。そのときの自分では想像がつかないこともあると考えて、受けてみたほうがいいと、今振り返って思います。