手の技と身体感覚から生まれる唯一無二の仕事。「手しごと」を生業に選んだARIA世代の日常、仕事との出合い、世界観を聞きます。独自のレシピで果物のおいしさを追求するコンフィチュールの作り手、違(ちがい)克美さん。会社勤めの経験があまりないまま離婚、生活のために働きながら、旅先で出合った味を自身のブランドに成長させました。

 横浜市内のビルの一室にあるコンフィチュール専門店「旅するコンフィチュール」。2013年のオープン時から、味や色に魅了された女性を中心に静かな話題となった。生産者から直接仕入れる素材を使い、店主の違 克美さん(50歳)が独自のレシピで手づくりしている。

伝統的な銅製のコンフィチュール用の鍋で果物を煮る。仕入れる素材によって商品は年中変わる
伝統的な銅製のコンフィチュール用の鍋で果物を煮る。仕入れる素材によって商品は年中変わる

 コンフィチュールとは、フランス語でジャムのこと。パンに塗ったり、ヨーグルトに混ぜたり、肉料理のソースとしても味わえる。

 違さんは結婚後、夫の転勤に伴って米国に6年間住んでいた。その後、夫はベルギーへ赴任。フランスが好きだった違さんは、頻繁に旅行で訪れてお菓子などを食べ歩くうち、コンフィチュールに魅了される

 「日本で手に入るジャムは、果物を煮込んでゼリー状にしたものが多いですね。でもフランスで食べたコンフィチュールはフルーツそのもので、全く違うおいしさ。フランスに行くたびにたくさん買っていたんです」

「旅するコンフィチュール」店主の違克美さん。店舗併設の厨房は、和室の住居だったビルの一室を全面改装した
「旅するコンフィチュール」店主の違克美さん。店舗併設の厨房は、和室の住居だったビルの一室を全面改装した