親の「生前整理」で、身の回りの物をどうやってスリム化すればよいでしょうか。使わない物をそのまま捨てるのではなく、さまざまなサービスの力を借りるのがベター。データ化したり、現金化したり、メモに書き残したり……親が納得する形で進められます。葬儀・お墓・介護など終活を取材してきた旦木瑞穂さんがリポートします。

親がメリットを納得してくれることが大事

 実家で親の生前整理を始めるとき、頭の痛い問題が不用品の処分方法。親が大切にしまってきた物をいきなり廃棄するのはご法度だ。きちんと納得する形で進めたい。

 そのためには、あらかじめ親に生前整理をするメリットを理解してもらうことが大切だ。大きく分けて3つある。まず1つ目は、親が人生を振り返るきっかけになること。2つ目は、親が大切にしてきた物を再認識し、場合によっては必要としている人に引き継げること。そして3つ目は、いざというときに残された家族が安心できること。これらを納得してもらえれば、スムーズに作業を進められる。

 今回は、実家の物を捨てるのではなく、生かす方法を順に紹介する。

親が生前整理をする3つのメリット。1.人生を振り返り、新たな生きがいも。親が思い出の物や写真を整理することで、幸せな記憶がよみがえり、大切にしてきた物・人を再認識できたりする。2.大切にしてきた物を引き継げる。親が所有している物を、業者に買い取り委託することで、大切にしてきた物の価値が分かり、必要としている人に引き継げる。3.家族や親しい人に迷惑をかけない。あらかじめ余裕を持って親が「物・心・情報」を整理しておけば、死後、家族が右往左往せずに済む

古い写真の整理が一番の親孝行に

 まずは、大量にある古い写真から手を付けたい。写真整理協会の理事、浅川純子さんは「写真の整理は、人生を振り返る最良のツール」と言う。後悔ばかり口にしていた親が、昔の写真を見返すことで「自分の人生はそんなに悪いものではなかった」と思い直したり、疎遠になっていた友人と再び交流したりするきっかけになる。写真で幸せだった過去を振り返り、自己肯定感が上がる効果もあるようだ。

 とはいえ、古い写真やアルバムはかさばる。そこで「スキャンしてデータ化してから処分するのがお勧め」(浅川さん)だ。親に写真をすべて残したいのか、それとも数枚を厳選したいのか確認してから作業にとりかかる。

 写真をすべて残す場合は、「節目写真館」「カメラのキタムラ」といった業者にアルバムごとスキャンを依頼してデータ化するのが手っ取り早い。例えば節目写真館の場合、アルバム1冊、写真200枚分のデータ化は2480円(税抜)で済む。作業期間は、3.5カ月かかるものの、早めに済ませる場合は3週間で完了するコース2980円(税抜)もある。

 データ化する写真を厳選する場合は、自分でスキャンすればよい。例えば、PFUの「Omoidori(おもいどり)」(1万3037円・税込)を使うと、iPhone 8や7のカメラ機能を利用して、アルバムの写真をスキャンできる。

古いアルバムの写真ははがすのが難しい。PFUの「Omoidori」なら、アルバムに張ったままスマホ内蔵カメラを使って写真をデータ化できる
古いアルバムの写真ははがすのが難しい。PFUの「Omoidori」なら、アルバムに張ったままスマホ内蔵カメラを使って写真をデータ化できる