墓じまい…親子で聞きづらいことも

 続いて祖父母の墓については、父は「今は自分が管理しているが、亡くなった後は墓じまいをしてほしい。既に寺の住職には伝えてある」という。その費用は、相続財産から工面することにした。

 そして5つ目。自宅の荷物は、祖父母の遺品の一部だけ残して、あと不要な物はすべて処分するのが、父母の希望だった。できるだけ荷物は減らしておくよう、生前整理を徐々に進めておくという。

Aさんの家の「親の片付け」解決策、。父(73歳)、母(70歳)、姉(本人、46歳)、妹(43歳)。1)介護は介護保険を利用しながら在宅で過ごし、限界がきたら施設に入所する。2)金銭管理は父名義の預金や国債、株式、不動産で、総資産は約9000万円。父が認知症になった場合に備えて、Aさんが弁護士に依頼して、任意後見契約と金銭管理契約を父母と締結する。3)相続は、父が先に亡くなり、母が相続する場合は、配偶者控除により無税(課税価格が1億6000万円までは無税)。母も亡くなり、子が想像する場合は税理士と相談する。4)祖父母が眠る墓は、父が亡くなったら、祖父母の墓は墓じまいする。費用は相続財産から捻出する。5)自宅の荷物は、不要な物は、生前整理で処分する

 Aさんのケースは、話し合いの結果、生前整理の基本「物、心、情報」の整理ができた事例だ。生前整理診断士を交えることで、親子とはいえ聞きづらいことも話し合えたという。ちなみに、Aさんの場合は1回 2~4時間の相談を4回ほど実施した。診断士への報酬は、初回相談は60分無料。その後の継続相談については1時間5000円(税別、交通費別)が相場だ。生前整理普及協会で、紹介してもらえる。

 生前整理には診断士のほかに「相談士」「アドバイザー」などがあるが、診断士が最上位で、解決まで導くことができる。相談士は相談を聞いてアドバイスするところまで。アドバイザーは、2級は自分の生前整理、準1級は親や友人の生前整理、1級は相続問題のアドバイスなどもでき、講師の資格を取ると、生前整理アドバイザーを育成できるという。

 次回は、親が生前整理を始めるきっかけの見極め方、親に生前整理を促す方法、進め方などを具体的に紹介したい。

取材・文/旦木瑞穂 写真/PIXTA