今や3世代同居は珍しく、介護も「遠距離」や「おひとりさま」など形を変えています。遠距離介護を支援するサービス「わたしの看護師さん」を提供するN.K.Cナーシングコアコーポレーション代表で看護師の神戸貴子さんに、今役立つ介護についての情報を3回にわたって紹介してもらいます。1回目は1番近い間柄である親子だからこその介護の難しさについて、対処法までしっかり解説します。

「親に優しくできない! 」は嫌いの逆

 介護をする上で大変なのは、時間管理や遠距離の問題などいろいろありますが、実は感情のコントロールがとても難しいという点なんです。子どもはどうしても元気だったときの親の姿を追い求めてしまうから。

 例えば親が脳卒中の後遺症で手が動かしづらくなったり、排泄(はいせつ)コントロールがうまくいかなくなったりしたときに、つい優しくなれず「なんでこんなこともできないの」と要求が高くなってしまう。

 嫌いなんじゃないんです。大好きな親に、元気な頃に戻ってもらいたいと思うあまりにそうなってしまうのです。

 では親はどうかといえば、「立場が逆転してしまった」と思うことで感情コントロールが難しくなって、子どもに当たるようになり、子どもも言い返し、最後はけんかになる。

 実は私自身も遠距離介護中なのですが、近ごろは父がなかなか電話に出てくれなくなりました。理由は分かっていて、私が電話で体調を聞きつつ「最近お酒飲んでるの?」と、言っちゃいけないと思いながら監視モードで聞いてしまうからです。

 介護を受けている人は医師から「お酒を控えなさい」「薬をちゃんと飲みなさい」「転んではいけません」と、たくさんの規制を受けています。そこに子どもが輪をかけて「ちゃんと薬飲んでる?」と親の行動をチェックし始めると、親は「うるさい!」と腹を立ててしまいます。ではどうすればいいのか。

「なんでこんなこともできないの」は元気だったときの親の姿を求めるから
「なんでこんなこともできないの」は元気だったときの親の姿を求めるから