「お墓」「墓地」と聞くと、灰色や黒色の墓石が並ぶ、薄暗い場所を思い浮かべる人は多いでしょう。しかし近年、公園のように明るく広々とした場所に色とりどりの花が咲く霊園や、駅近で雨天でもお参りできる納骨堂など、従来のイメージとかけ離れたお墓が都市部や近郊に次々と誕生しています。葬儀・お墓・介護といった終活を取材してきた旦木瑞穂さんが、新しいお墓をリポートします。

 親が元気なうちに、田舎のお墓を「墓じまい」する人が増えている。そのとき問題になるのが、遺骨をどこへ納めるのかということ。後の管理を考えて、自分が住んでいる場所に近い一般墓を購入して埋葬する人がいる一方、ここ数年注目を集めているのが「樹木葬」と「納骨堂」だ。

 お墓の総合情報サイト「いいお墓」の調査では、樹木葬と納骨堂を選ぶ人が急増。5年前までは全体の1割強と少数派だったが、その後、急伸し、昨年の調査では利用者数が一般墓を大幅に上回った

 樹木葬と納骨堂の何が魅力で、老親も子も引きつけられるのか。今回は、その理由を探る。

購入したお墓、1番人気は樹木葬。約7割の人が樹木葬と納骨堂を選択
出典:お墓の総合情報サイト「いいお墓」による「お墓の消費者全国実態調査」。対象は2015年、2019年に「いいお墓」を使用してお墓を購入した日本全国の男女。有効回答数は2015年が591件、2019年は828件。2015年の和型と洋型のお墓は、2019年では一般墓として表示されている。小数点以下を四捨五入した

「自然にかえる」「継承者が不要」な樹木葬

 まずは、樹木葬から見ていこう。実は、樹木葬にはきちんとした定義があるわけではなく、一般に樹木をシンボルとするお墓、全般を指す。そして、継承者を必要としない「永代供養墓」の場合が多い。従来の石のお墓とは異なり、「自然にかえる」というイメージが新鮮だったこと、また少子化という社会背景から継承者を必要としないことも大きな魅力となり、全国に利用者が広がっている。

 樹木葬を最初につくったのは、岩手県一関市の祥雲寺とされている。前住職の千坂げんぽうさんが、栗駒山の里山を保全するために1999年7月、一関市から樹木葬の許可を得たのが始まりだ。

 祥雲寺の樹木葬は半径1メートルの円内の敷地を1区画とし、納骨の際に、石の墓標の代わりにウメモドキ、エゾアジサイといった栗駒山に自生する低木の花木を植える。美しい里山を後世に残す趣旨で、墓地として許可された里山に遺骨を直接埋める。墓石、カロート(お墓の地下に遺骨を納めるための場所)などの人工物は一切設置できない。

「永代供養墓」ってなに?
 永代供養墓とは、寺院や企業、自治体が責任を持って、永代にわたって管理する墓地のこと。家族や親族の遺骨のみ納骨される個人墓や家墓と異なり、不特定多数の遺骨と同じ場所に納骨されるタイプのお墓は「合祀(ごうし)墓」「合同墓」とも呼ばれる。子どもがいない人や、子どもがいても負担をかけたくない人から支持を集めている。