イーロン・マスクは地球を救いたいのか?

斎藤 名前を挙げて悪いけど、私はイーロン・マスクを尊敬できない。電気自動車は環境に優しいというけど、その製造に必要な銅、リチウムやコバルトはどこからくるのか。結局グローバル・サウスから掘削し、そこでまた人権格差や環境破壊を生み出しています。

 世界一の富豪であるマスクは先ほど述べた125人のうちの1人なわけで、本当に地球を救いたいのか疑問です。電気自動車で金もうけして承認欲求を満たし、最終的には宇宙に行きたいというほうが勝っているのではないか。地球がこんなに大変な時期に、宇宙に行っている場合ではない。宇宙に行く資金があったら、まずは地球の健康のために使ってほしいですね。

 彼のような生き方がカッコいいという社会の価値観が大きく変わらないと地球は滅ぶし、電気自動車に乗っていれば環境意識が高いという錯覚に、早く気づくべきです。

長坂 僕が提唱する「サステナブル・キャピタリズム」って、最終OSじゃないんですよ。斎藤さんが『人新世の「資本論」』で主張しているのは最終OSかWeb3.0くらいのことだと思う。僕が考えているのはいわばアップデート版。今の資本主義は1.0か2.0なのか知らないですけど、僕の考えは、3.0に行くための2.5ぐらいの領域。いきなり3.0をやれと言われてもなかなかできないです。

斎藤 感性とか考え方を少しずつ変えていく必要があると。

長坂 そうです。少しずつアップデートしていたら、3.0になっていたと。最終的に「あ、これか」というようなリードをしていかないと一般の人は理解しにくい。だから僕はサステナブル・キャピタリズムという名のアップデート版にしました。

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長坂真護&斎藤幸平 脱成長コミュニズムは実現できるか

『サスタナブル・キャピタリズム』(長坂真護著、日経BP)
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取材・文/吉井妙子 構成/市川礼子(日経xwoman ARIA) 写真/洞澤佐智子