私たちがテレビなどのメディアで触れている経済問題は一般的な解釈(A面)です。一方で経済問題には「こういう見方もある一方で、こういう見方もできる」という別の視点(B面)が存在します。ARIA世代が知っておくべき経済問題の「A面」と、そうだったのか! と思わず膝を打つ「B面」を、気鋭のエコノミスト・崔真淑(さいますみ)さんが分かりやすく読み解きます。

コロナ禍で国債発行大幅増、税収は約2兆円減

 みなさん、国からの特別定額給付金10万円は振り込まれましたでしょうか? お金がもらえるのはありがたい半面、日本の財政状態がよくないことは周知の事実。「後で大きなツケを払わされるのは私たち、または子どもたちの世代なのでは?」――そんな、複雑な気持ちを抱えている方もいるのではないかと思います。

 コロナ禍で、国の税収は2年ぶりに60兆円を割り込んでいます。財務省の発表によれば、2019年度の国の税収総額は58.4兆円で、2018年度に比べて約2兆円減少しました。理由は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で年度末から企業収益が落ち込み、法人税が前年度比で1.5兆円程度減ったことなどが挙げられています。

 一方、2020年6月に国会で成立した補正予算は過去最大規模の32兆円。第1次補正予算と合わせると50兆円を超え、その大部分は国債で賄われます。

特別定額給付金、持続化給付金、雇用調整助成金…新型コロナウイルス感染症関連の給付金や補助金はさまざまあります
特別定額給付金、持続化給付金、雇用調整助成金…新型コロナウイルス感染症関連の給付金や補助金はさまざまあります

 ちなみに、東京都は補正予算を編成して主に「財政調整基金」から総額1兆円以上を新型コロナウイルス対策にあてました。小池百合子都知事が就任した2016年度の同基金残高は6274億円だったのに対して2020年度の残高は807億円と大幅減少になる見込みで、さらに、都の借金にあたる都債の増発も視野に入っているようです。つまり、他の自治体に比べて豊かな東京でも、こうした状況です(再選を果たした小池都知事は7月9日、「夜の街」対策や中小企業向けの家賃支援なども盛り込んだ3132億円の補正予算案を発表)。

 どこも借金ばかりで、どうなっていくのだろう? と、心配になる一方で、「自国の通貨を発行している国でインフレでなければ、いくら自国通貨建ての債務(借金)があっても財政破綻しない」という、驚きの理論を主張する人や政党もあります。それが現代貨幣理論(MMT)です。