新型コロナウイルスの感染拡大は、経済にどのような影響を与えるのか。リーマン・ショック再び? もっと大不況がやってくる? ――誰もが気になるこの問いを気鋭のエコノミスト・崔真淑(さいますみ)さんにぶつけました。経済はどうなるのか、そして私たちが取るべき行動とは?

(上)コロナの経済打撃はリーマン・ショック+東日本大震災?
(下)「コロナ後」の経済回復のチャンスは? 私たちはどう動く? ←今回はここ

 前回は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が今後どう収束していくかが不透明な中、経済予測も、楽観論から悲観論まで非常に不確実性が高いものになっており、経済予測そのものが意味を持たなくなるかもしれないこと。そして、コロナ禍による経済への影響は「リーマン・ショック+東日本大震災+α」レベルのダメージになるかもしれず、今からそれも想定しておかなければならない、というお話をしました。

優秀な人材がGAFAやGAFA的な企業に吸収される?

 2020年4月22日に驚きのニュースが入ってきました。Facebookがインドの通信大手、ジオ・プラットフォームズに57億ドル、日本円で約6100億円を出資すると発表したのです。同社はインドで約4億人の携帯電話の契約を持っています。その親会社であるリライアンス・インダストリーズの株価は大幅上昇しました。多くの企業が資金繰りに困っているこんな時期であっても、たくさんお金のある企業もあるということでしょう。

 アメリカでは、投資銀行などで働いていたIT系の優秀な人材がリーマン・ショック時に解雇され、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)といった巨大デジタル系企業に雇用されることで、のちのFinTechやAI(人工知能)ブームを生み出したといわれています。

 アメリカと日本は雇用の流動性に大きな違いがあるので単純比較は禁物ですが、こうした動きをポジティブに捉えるとすれば、経済の低迷によって企業が淘汰され、優秀な人材が市場に出るということは、「コロナ後」の経済回復のチャンスであるともいえます。流出した人材が新たなイノベーションを生み出す可能性もあります。さらには、GAFAはもちろん、ソーシャルディスタンスが必要になるといった「コロナ後」の世界の価値観にフィットするような商品やサービスの準備を今から始めている、GAFA的な企業の動きも気になるところです

コロナ後には、FinTechやAIのような大きなイノベーションの波が起きる?
コロナ後には、FinTechやAIのような大きなイノベーションの波が起きる?