新型コロナウイルスの感染拡大は、経済にどのような影響を与えるのか。リーマン・ショック再び? もっと大不況がやってくる? ――誰もが気になるこの問いを気鋭のエコノミスト・崔真淑(さいますみ)さんにぶつけました。今回は、連載の番外編。上・下でお届けします。

(上)コロナの経済打撃はリーマン・ショック+東日本大震災? ←今回はここ
(下)「コロナ後」の経済回復のチャンスは? 私たちはどう動く?

不確実性が高い「2020年後半には経済回復」

 新型コロナウイルスの感染拡大は、経済にどのくらいの影響を与えているのでしょうか。例えばIMF(国際通貨基金)の「世界経済見通し」では、世界経済は2020年にマイナス3%と大幅に縮小し、その落ち込みはリーマン・ショック後の2009年のマイナス0.1%よりも大きくなると予測しています。

 同見通しの中でIMFは、今回のショックの持続期間や深刻さについては依然として不確実性が高いとしながらも、「2020年後半にパンデミックが収束し、拡散防止措置を徐々に解除することが可能になる」という想定(ベースラインシナリオ)によると、政策支援などによる経済活動が正常化し、2021年には世界経済は5.8%成長すると予想される、ともしています。日本経済についても、エコノミストから「2020年の後半から(あるいは、夏以降)経済が急回復する」といった予測が出ています。

経済予測が意味を持たないほどの大打撃が襲ってくる?
経済予測が意味を持たないほどの大打撃が襲ってくる?

 その一方で、「新型コロナウイルスに有効なワクチンができるまで、経済の低迷は長く続く」という慎重な見方もあります。私は比較的、悲観的な見方をしています。ワクチンや根本的対策が出てくるまでは緩やかな自粛ムードが続くことが予想され、コロナ前のビジネス環境にすぐに戻ると思えないからです。株価は絶好調ですが、これは国策の影響であり、経済の鏡とは見ない方がよいでしょう。

 ウイルスがまん延することで世界の経済が打撃を受けるという今回の事態は、私たちが予測もしてこなかったことです。世界的な感染が、今後どう収束していくか分からない、そのため経済予測も、楽観論から悲観論まで非常に不確実性が高いものになっています。これは「今回は、経済予測が意味を持たなくなるかもしれない」ということを、私たちに突き付けているのかもしれません。