私たちがテレビなどのメディアで触れている経済問題は一般的な解釈(A面)です。一方で経済問題には「こういう見方もある一方で、こういう見方もできる」という別の視点(B面)が存在します。ARIA世代が知っておくべき経済問題の「A面」と、そうだったのか! と思わず膝を打つ「B面」を、気鋭のエコノミスト・崔真淑(さいますみ)さんが分かりやすく読み解きます。

社外取締役の発言が呼び水となって日産社長が退任へ

 2019年10月、上場企業の取締役に占める社外取締役の比率は初めて3割を超えたと報道されました。さらに、2019年12月の国会で改正会社法が可決、成立し、上場・非上場を問わず、一定の条件を満たす企業は社外取締役の設置が義務付けられることになりました。政府は2021年中の施行を目指すとしています。

 株式会社であれば必ず取締役を置かなければならず、取締役会設置会社では3人以上の取締役が必要と人数も決まっています。取締役会では会社の業務執行に関する意思決定や監督を行います。通常の取締役であれば、社内で昇進する、あるいは外部から人材をヘッドハントしてきて経営に当たってもらう、といったことがイメージできます。では「社外」の取締役とは何でしょう。

 社外取締役とは、その会社とは利害関係のない有識者や経営者から選任した取締役のことで、経営を第三者の視点で判断するなど、チェック機能を果たす存在です。2019年は象徴的な出来事がありました。2018年のカルロス・ゴーン日産自動車元会長の逮捕に関わる一連の報道は記憶に新しいところですが、2019年9月の日産自動車の取締役会で当時の西川広人社長の辞任が決まりました。その決定は、社外取締役から「経営のバトンタッチ」について発言があったことが呼び水となった、といいます。

 そう、社外取締役の究極の仕事とは、ふさわしくなくなった社長を「クビにする」ことなのです。

にわかに注目を集める社外取締役の存在意義、考えたことがありますか?
にわかに注目を集める社外取締役の存在意義、考えたことがありますか?