あなたが取締役に選任されたら?

 実は私も、ある企業の社外取締役だった経験があり、現在もまた別の企業の社外取締役を務めています。威圧感のある取締役会の場で、反対意見を言うのはそれなりに勇気のいることです。

 私が社外取締役として尊敬しているのは、日本電産の代表取締役会長、最高経営責任者である永守重信氏です。永守氏は多くの会社の社外取締役も務めてきましたが、ある企業の決定に「ノー」を表明し、社外取締役を退任したときの引き際の潔さがとても印象的でした。

 ARIA読者は、勤務している会社で昇進して取締役に就任する、あるいは私のように専門性のある仕事をしていることで社外取締役を依頼される、といったこともあると思います。ダイバーシティを重視して女性の取締役を増やそうとする動きもあるなか、今後、働く女性であれば、取締役として経営に携わることは、他人事でなくなってくるでしょう。

上場企業の女性役員は1000人を突破

 冒頭でも触れましたが、実際に2019年には、上場企業の取締役に占める社外取締役の比率が初めて3割を超えました。さらに上場企業の監査役や執行役を含む役員では女性が1000人を突破したと報道されました。

 取締役会の決定は、いわゆる経営判断です。もし誤った判断をして会社に損害を与えることになれば、株主から訴訟を起こされるといった形で、判断をした経営陣の一人として責任を負わなければなりません。そのためには賛成でも反対でも、それに対する理由とともに、自分の意見を明確に伝えることが必要になります。

 経営のポストが女性に対して大きく開かれてきたことをチャンスと受け止め、もし取締役や社外取締役にならないかと声がかかったら、ぜひ前向きに引き受けてください。経営を通じて、会社と世の中を変えていきましょう。

取材・文/阿部祐子 写真/PIXTA