取締役の価値観が偏った企業は、投資家にもリスク

 よくも悪くも、会社は、最高経営責任者に権力が集中しやすい仕組みになっています。例えば2019年9月27日の日本経済新聞は、いまだに約3割の企業で、役員報酬の支給額などの最終決定権が社長に一任されていると報じられています。このように、報酬面までもトップが握っていれば、言いたいことが口にしづらい状態になりやすいものです。カルロス・ゴーン元会長にまつわる一連の事件でも、かつての不透明な報酬決定が指摘されていました。

 経営陣が暴走すれば、日産やかんぽ生命のように株価が暴落したり、エンロンのように会社が倒産したりすることで、投資家は大打撃を被ってしまいます。企業統治がうまくいっているかどうかは、投資家にとっても重要な情報です。

「スチュワードシップ・コード」とは?

 実は、金融機関にはスチュワードシップ・コードと呼ばれるものがあります。これはコーポレートガバナンスの向上を目的とした機関投資家の行動規範のこと。コーポレートガバナンス・コードと車の両輪のような役割を果たして機能することで、健全な投資環境を保つものとされています。法的拘束力はありませんが、機関投資家にも目先の利益の追求だけでなく、その投資に対する責任があることを明確にしているのです。最近ではこの原則に従い、従来は会社提案に対して「ノー」と言うことがまれだった機関投資家が、株主総会での提案を吟味し、会社の提案を否決するといった動きも出始めています。

 冒頭でお話しした改正会社法が施行されれば、該当する企業は社外取締役の設置が法的に義務化されることになります。今後、機関投資家を含めた投資家は、その会社が置こうとしている社外取締役が本当に役割を果たせる人物なのか、人選により厳しい目を向けていくことになるでしょう。