取締役会=オールド・ボーイズ・クラブ?

 実はこの法律に先駆けて、日本の上場企業では既に、2015年に東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)によって社外取締役が置かれています。2018年の同指針の改訂時には、取締役の「3分の1以上」を独立した社外取締役にすべき、という議論もありました。

 取締役会は、伝統のある企業であればあるほど、一つの企業文化のなかで昇進してきた同質のメンバーの集まりになりがちです。それは国を問わず、「オールド・ボーイズ・クラブ」と冷やかされる男性中心の仲良しクラブのような状態。このような環境では、お互い厳しいことは言いづらく、トップを退陣させることも難しいのです。

取締役会が「オールド・ボーイズ・クラブ」と冷やかされる男性中心の仲良しクラブのような状態では、厳しいことは言いづらくなる
取締役会が「オールド・ボーイズ・クラブ」と冷やかされる男性中心の仲良しクラブのような状態では、厳しいことは言いづらくなる

 では、社外取締役が必ずうまく機能するかといえば、ここにも問題がある場合があります。例えば、2001年に倒産したアメリカのエネルギー大手、エンロン社の巨額の粉飾決算、いわゆる「エンロン事件」は、有名な会計事務所や法律事務所までが加担した大スキャンダルでした。しかもエンロンは、経営では社外取締役を置き、コーポレートガバナンスのお手本とされるような存在でした。

 後日の調査で、これらの社外取締役の多くは同社の会長とつながりがあったことが分かりました。

 最近の例では、顧客への不適切販売が表沙汰になった、かんぽ生命保険があります。社外取締役の比率が高かったにもかかわらず、不祥事を防げませんでした。その原因として、会社側から十分な情報が提供されていなかったことも指摘されています。

今回のKey Word「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」
2015年6月、上場企業を対象に策定された、企業統治(コーポレートガバナンス)を実行するための5章からなる指針。実施を一律に義務付けるものではないが、各原則を実施しない場合にはその理由の説明を求める「コンプライ・オア・エクスプレイン」の手法が採られている。