私たちがテレビなどのメディアで触れている経済問題は一般的な解釈(A面)です。一方で経済問題には「こういう見方もある一方で、こういう見方もできる」という別の視点(B面)が存在します。ARIA世代が知っておくべき経済問題の「A面」と、そうだったのか! と思わず膝を打つ「B面」を、気鋭のエコノミスト・崔真淑(さいますみ)さんが分かりやすく読み解きます。

「短期的で米国にやさしい」トランプvs「長期的で地球にもやさしい」バイデン

 2021年1月20日、米国でバイデン次期政権が発足します。大統領選に続いて、上院、下院の両議会でもそれぞれ民主党が多数派を確保することになり、政権の追い風になるともいわれています。

ホワイトハウスの住人がバイデンに変わる日が目前です
ホワイトハウスの住人がバイデンに変わる日が目前です

 主に経済政策で比較すると、まずトランプ大統領は、新型コロナ禍でも目先の米国経済の復活を優先し、科学的なエビデンスに基づいたコロナ対策よりも経済優先の政策を取り続けました。これが都市部の国民の反感を買い、さらにパンデミックで1000万人規模の雇用が失われたのが致命傷となりました。しかしそもそも減税を行い、株高に誘導してくれる政策は経済界にとって悪い話ではありません。景気も良かっただけに、平時であれば大統領選でのトランプ再選があり得たかもしれません。

 対するバイデン次期大統領は、あくまで長期的な視点に基づいて、米国経済だけでなく、地球環境にも配慮した政策を掲げています。オバマ政権で確立していた科学的なエビデンスに基づく政策決定を復活させてコロナ対策を行うことも期待されています。まとめれば、短期視点で米国経済にやさしいトランプ政権vs長期視点で米国と地球にやさしいバイデン政権、という見方ができるでしょう。

 ところで、バイデン次期政権が掲げる「地球にやさしい」というメッセージを、聞こえがいい理想論として聞き流していないでしょうか。実はこれは、非常に大きな変化を意味するのです。今回は、私たちがビジネスパーソンとしてぜひ心しておきたいことをお話しします。