Brexitによる短期的な経済への影響は小さい

 ここまで見てきたように、EUとはそもそも、経済的なつながりを持つことで戦争のない世界を作るための枠組みでした。イギリスが離脱の方向に大きく進んでいるものの、そもそも単一通貨であるユーロも使用していないため、短期的な経済への影響は小さいと言えるでしょう。

 しかし、報道されているように、イギリス以外でもEU懐疑派の政党が台頭してきています。Brexitが呼び水になり、経済的なつながりによる世界平和よりも、自国主義的な動きが加速してくることも考えられます。

 私は、Brexitがもたらす短期的な経済面での影響以上に、国際政治の分断で、国際交易が停滞し、長期的には経済的にどのような影響が出るかに注目しています。

 2020年の世界政治の在り方といえば、11月のアメリカ大統領選挙が思い浮かびますが、それだけでなく、今後の世界の流れを占う上でEUからも目が離せません。

取材・文/阿部祐子 写真/PIXTA