難民、移民は経済にプラスの影響を与えている

 経済面だけでなく、EU域内での人々が自由に行き来して交流できることは、本来のEUの理念にとってはプラスのはずです。しかし2011年にシリア内戦が勃発して以降、難民問題がEUで大きなトピックとなっています。

 もし好景気下であれば、労働力にもなりうる難民の受け入れは、好感を持って人々に受け入れられていたかもしれません。しかし近年は経済の停滞により、ヨーロッパでも経済格差の固定化が指摘されています。そうした状況下での難民の流入は不満や反発を招き、ナショナリズム系の政党が支持を集めるといった現象を生んでいます。このように、経済の状態が国の政治にも影響を及ぼしているのです。

 一方で、「難民・移民は、ヨーロッパ経済にプラスの影響を与えている」という研究結果もあります。

 これは仏国立科学研究センターやクレルモン・オーベルニュ大学の経済学者たちがOECDとEU統計局による15カ国、30年分のデータを分析し、1人当たりGDPや失業率、公共財政などの数値を検討したもので、2018年に発表されました。

 研究結果では、合法な「難民」は、移り住んだ国に悪影響を与えることはなく、また、既に移住申請をしている「移民」については、移民支援などで公共支出が増えたものの、移民の納める税が増えることでバランスが保たれている、と報告されています。