世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表する「ジェンダー・ギャップ指数」は、経済活動や政治への参画、教育水準、健康面など4つの分野から算出される男女間の格差を示す指標です。2019年12月の発表では、日本は153カ国中121位と過去最低を更新。もちろん、主要先進国では最低でした。どこに問題があり、その結果どんなことが起きているのか、東京大学大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻 教授の瀬地山 角さんが解説します。

(1)ジェンダーのステレオタイプで生まれる2億円の家計損失
(2)日本をハゲ山にしないために ←今回はココ
(3)個人差は性差を必ず超える

共働き世帯が多いのは、実は地方都市

―― 今や共働き世帯は専業主婦世帯の2倍以上。この比率は、地方でも同じですか?

瀬地山角さん(以下、敬称略) おや? 地方と都市部、どちらに共働き世帯が多いと思っていますか? 大都市部に多いと思われがちですが、2015年の国勢調査によると、都道府県別に見て共働きの妻が多いのは、1位は山形県、2位は福井県、以下島根県、鳥取県、富山県と続きます。一方、専業主婦が最も多いのは奈良県で、2位が大阪府、3位が神奈川県、以下兵庫県、埼玉県、千葉県と続きます。(※)

 妻の有業率が高い東北・北陸・山陰地域は、平均所得が高くはないですから、女性も働くことが家計に組み込まれているという面もあるでしょう。三世代同居や親との近居が多く、保育園の待機児童問題も深刻ではないので、共働きの環境も整っています。

 一方、専業主婦が多いのは、いずれも地下鉄か地下鉄に接続する鉄道がある地域です。人口が密集していて電車通勤が一般的なところです。鉄道の沿線にベッドタウンが広がっている地域に主婦が集中していることになります。都市部で夫の収入が高いため、経済的な理由のために自分が興味のない仕事まではしたくない。職住が離れていますし、待機児童問題もあります。その結果、「無理に働かなくても」となるのです。

 さらに言えば、それを助長してきたのが、配偶者控除システムなのです。

―― どういうことですか?

※夫が就業している世帯のうち、妻も就業している世帯の割合で見た順位