新型コロナを機に学びへの関心が高まった2020年。通勤に費やしていた時間を学びに充てられるようになった人や、オンライン学習に目覚めた人もいるでしょう。変化が大きくて先が見通せないVUCA時代の今、ビジネスパーソンにとって大事なのは学び続けることと、その成果をアウトプットし続けること。注目のオンラインスクールや社会人大学院など、学び続けるARIA世代の「今」に迫ります。

 10代で芸能界デビューしアイドル歌手、女優として活躍。1995 年には自らホームページを開設するなど、常に新しいものを学び、取り入れてきた、いとうまい子さん。2010年には45歳で早稲田大学に入学し、その後、大学院に進み、「予防医学」を促進するロボットを開発しました。現在は、早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程で「老化学」の研究と博士論文の執筆に没頭中とのこと。56歳の今もなお学び続ける理由とモチベーション、次は何を目指すのかを聞きました。

学びの目的は「お世話になった方々への恩返し」

―― いとうさんは高校卒業と同時に芸能界に入って仕事を始められましたが、45歳のときに突然、早稲田大学に入学したのはなぜですか。

いとうまい子さん(以下、敬称略) 私はずっと芸能活動を続けてきて、「いつか、お世話になった方々への恩返しがしたい」と思っていました。知識や技術を身に付けて、社会に何かを返したいという気持ちです。そんなとき、2008年に仕事をきっかけに「予防医学」のことを知りました。

 予防医学に興味を持ち、たくさん本も読んでみましたが、どうしても知識が受け売りになってしまう。もう少し違ったやり方はできないか……そう思ったとき、大学に行こうと思いついたのです。大学に通ったことがなかったので、あこがれもありました。そして、通信課程で「予防医学」を学べる早稲田大学人間科学部eスクールに入学することになりました。

いとう まい子さん(56歳)。1983年にアイドル歌手「伊藤麻衣子」としてデビュー。2010年早稲田大学入学、14年に早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程、16年同博士課程に進学。19年エクサウィザーズのフェローに就任。写真は2014年、早大卒業当時のもの
いとう まい子さん(56歳)。1983年にアイドル歌手「伊藤麻衣子」としてデビュー。2010年早稲田大学入学、14年に早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程、16年同博士課程に進学。19年エクサウィザーズのフェローに就任。写真は2014年、早大卒業当時のもの

「無駄な学びなんて、一つもない」

―― 40代の大学生活は、いかがでしたか。

いとう 想像以上にハードな4年間でした。大学で取得するのは、全124単位。最初の3年間で120単位を取る履修計画を立てた結果、無理がたたって帯状疱疹(ほうしん)になったこともありました。

 授業は、基礎的な内容もありましたが「役に立たない」ことは一つもありませんでした。例えば、統計学。今、大学院で老化学の研究をする中で、統計の大切さを実感しています。学びは、すべてつながっているんですよね。

 中高生の頃は「必要ないんじゃないか」と思う授業もありましたが、大人になって学び直して感じるのは、無駄な学びは一つもないということ。できることなら、中学生に戻って勉強をしっかりやり直したいくらいです。

いとうまい子さんにとって学びとは?お世話になった人たちへ、恩返しをするための手段。自分のレベルに応じて現れる敵(課題、壁)を攻略するロールプレイングゲームのようなもの。本を読んだり、大学・大学院で学んだりするだけではなく、学んだことを自分で掘り下げて人に伝えること。
いとうまい子さんにとって、学びとは? 答えは次ページ以降に