誰もが自由に発信できる「人類総メディア時代」。そこには、知らないうちにネット炎上に巻き込まれたり、フェイクニュースを拡散してしまったりというリスクも潜んでいます。ネット炎上を予防するには、また炎上したらどう対処すればいいのか。企業と個人では違いがあります。統計的な手法を用いてデータを分析し、ネットメディアを研究する国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授、山口真一さんに聞きました。

(1)「正義感」でネット炎上に加担する人の意外なプロフィル
(2)企業はSNSをどう使うべきか 炎上防止対策を考える ←今回はココ
(3)フェイクニュースが日本でも拡散 真偽を見抜くには?

個人が炎上したら、「反論しない」「無視」が基本

編集部(以下、略) 今は有名人だけでなく一般の人でもネットで攻撃されたり、炎上したりします。予期せぬ攻撃を受けたら、どう対応すればいいでしょうか。

山口真一さん(以下、山口) 企業と個人とでは対策は全く違います。個人の場合はちょっと攻撃的なコメントを受けたからといって対応する必要はありません。もし自分に明らかな非がある場合は取り下げて謝罪するといった対応もありですが、基本は無視が一番です。ネット上で攻撃的にかみついてくる人は議論をしたいのではなく攻撃したいだけ。どんなにロジカルに反論しても、「お前は何も分かってない」と余計に攻撃されます。反論すればするほど、攻撃が激しくなって泥沼になります。

 前回(「正義感」でネット炎上に加担する人の意外なプロフィル)もお話ししたように、攻撃する人はマジョリティーではないので、「そんなことを思う人もいるのか」と軽く捉えるくらいでいいと思います。

 社会にはいろいろな考えの人がいて、中には失礼な人もいる。ツイッターではブロックすると相手に分かるので、ミュートすることを推奨しています。攻撃的なアカウントをミュートにするだけでタイムラインに表示されなくなる。それだけで精神的に楽になりますから、SNSに備わった機能を使うことも大事です。

ツイッターではミュート機能を使うだけで相手のツイートが表示されなくなる
ツイッターではミュート機能を使うだけで相手のツイートが表示されなくなる

山口 2022年10月からプロバイダ責任制限法の改正が施行されたので、攻撃してくるアカウントを特定することがだいぶ楽になりました。とはいえ、訴訟を起こすのは大変です。仮に裁判で勝って賠償金が請求できても払われてないケースもありますから。

―― プロバイダ責任制限法の改正でどう変わったのですが?

次ページ以降、企業の炎上予防策についても解説します
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