ここ数年、深刻な人手不足を背景に40代以上にも転職のチャンスは拡大してきました。2020年、コロナ禍で求人市場が急速にしぼんだものの、7月以降、再び回復基調にあります。そんな中、今注目を浴びているのが、40代のキャリア女性。ミドル・ハイクラス向け転職エージェント「ジェイ エイ シー リクルートメント」で3000人もの転職を支援してきた経験を持つ、井上登紀子さんに実態と成功の方程式を聞きます。今回は、転職で成功する人と後悔する人の違いについてです。

―― 「7月以降、企業の求人数が再び回復基調にある」(前回記事「女性管理職の転職は攻め時 コロナ禍でも強い市場ニーズ」参照)ということでしたが、現在の求職者の動向を教えて下さい。実際に40~50代のキャリア女性で転職活動をしている人は増えていますか。

井上登紀子さん(以下、敬称略) リーマン・ショックのときもそうでしたが、社会情勢が激変して景気が悪化すると、今、職に就いている人は、転職活動を控える傾向にあります。ニュースで「転職希望者数が増えた」と報道されるのは、職を失って転職する人の数も含んでいるからです。

 そのため、私たちのもとへ相談に来られる40~50代のキャリア女性の数は、コロナ以前と比べてさほど変わっていません。社会情勢の変化に影響されて転職を考えるというよりも、長期的な視野で自らのキャリアを見据えて、最適だと思えるタイミングで転職活動をされているからだと思います。

 大手企業にお勤めであれば、50代から役職定年という形で給料も仕事の幅も減っていきますから、40代はキャリアを見つめ直す分岐点でもあります。残りの仕事人生において、自分の可能性を追求してみたいと考える方は多いのではないでしょうか。

ミドル・ハイクラス向け転職エージェント「ジェイ エイ シー リクルートメント」の井上登紀子さんに、40歳以上の転職で成功する秘訣を聞いた
ミドル・ハイクラス向け転職エージェント「ジェイ エイ シー リクルートメント」の井上登紀子さんに、40歳以上の転職で成功する秘訣を聞いた

やりたいことができる環境でも、青い鳥を探す人も…

―― 転職で成功する人、後悔する人の違いはどこにあるのでしょうか?

井上 まずは自分に求められていることを正しく理解し、しっかり成果を出して転職先の会社や事業に貢献する。その延長線上に、やりたい仕事で自己実現を果たし、望むキャリアを築き上げていく。そんな長期的なビジョンを描ける人は、結果として転職でステップアップされているように感じます。

 逆に「今の仕事が嫌だから別の会社で新しいことをしたい」「自分の仕事が評価されていない」などの不満から転職活動をされる方は、そもそもマッチングがうまくいかない傾向があります。中には、本来その先にやりたいことができる環境があるのに、それに気付かないまま青い鳥探しをしてしまう人もいます。自分のスキルを正確に見積もり、市場価値を把握することが、良いマッチングにつながります。