ここ数年、深刻な人手不足を背景に40代以上にも転職のチャンスは拡大してきました。2020年、コロナ禍で求人市場が急速にしぼんだものの、7月以降、再び回復基調にあります。そんな中、今注目を浴びているのが、40代のキャリア女性。ミドル・ハイクラス向け転職エージェント「ジェイ エイ シー リクルートメント」で3000人もの転職を支援してきた経験を持つ、井上登紀子さんに実態と成功の方程式を聞きます。

―― 新型コロナウイルスの影響により、多くの企業で業績が悪化し、総務省の「労働力調査」では対前年の就業者数が大きく落ち込んでいます。転職市場の現状を教えてください。

井上登紀子さん(以下、敬称略) 2008年のリーマン・ショックとよく比較されますが、状況はまるで違います。当時は転職市場のアンバランス感が激しく、求人が半減した天変地異とも言える惨状でした。しかし、今回のコロナ禍は、企業の採用意欲が落ちたわけではありません。

 当社での2020年上半期の求人数は、前年と比較して約2割減でした。しかし、7月以降は徐々に回復し始めて、9月時点では前年とほぼ変わらない求人数に戻りました。

出典:総務省統計局「労働力調査(基本集計)」
出典:総務省統計局「労働力調査(基本集計)」
コロナ禍で求人倍率は1倍を割り込んだものの、2008年のリーマン・ショック前後に比べると影響は小さく、企業の採用意欲が落ちたわけではない(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」)
コロナ禍で求人倍率は1倍を割り込んだものの、2008年のリーマン・ショック前後に比べると影響は小さく、企業の採用意欲が落ちたわけではない(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」)
コロナ禍で求人倍率は1倍を割り込んだものの、2008年のリーマン・ショック前後に比べると影響は小さく、企業の採用意欲が落ちたわけではない(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」)

―― 今、採用を積極的にしている業種はどこでしょう。

井上 特に目立つのは、デジタル系企業の求人。働き方がテレワーク中心になったことで、在宅勤務の環境整備にまつわるニーズが急速に高まっています。業種としては例えば、パソコンメーカーやシステム関連、セキュリティーソフトを扱う会社で、営業職や管理職の求人が急増しました。

 また、在宅ワークにシフトした企業が自社の業務改革を進めるために、システムエンジニアやデータアナリスト、経営企画といった職種を募集するケースも多く見られました。それ以外では、ステイホームの影響により、ECサイトのサポート業務、物流のサプライチェーン最適化業務、健康器具やリラクセーション関連企業の求人も増えています。