ここ数年、深刻な人手不足を背景に40代以上にも転職のチャンスは拡大してきました。2020年、コロナ禍で求人市場が急速にしぼんだものの、同年7月以降、再び回復基調にあります。そんな中、今注目を浴びているのが、40代のキャリア女性。ミドル・ハイクラス向け転職エージェント「ジェイ エイ シー リクルートメント」で3000人もの転職を支援してきた経験を持つ、井上登紀子さんに実態と成功の方程式を聞きます。最終回は、40代からの転職で大切な「自分の市場価値」の見極め方を紹介します。

―― 自分に合った転職先がなかなか見つからない場合、どういう理由が考えられますか?

井上登紀子さん(以下、敬称略) 自分のスキルの市場価値が正しく把握できていなかったり、自分で思い込んでいるコアキャリアが違っていたり、自己分析がきちんとできていない可能性があります。

 これまでお伝えした方法をもとに、キャリアの棚卸しをやり直してみましょう。同時に、いったん原点に立ち返ってみることも重要です。

今の仕事に対する不満から、転職を考えてはいけない

―― 原点に立ち返るとは、どういうことでしょうか?

井上 そもそも、なぜ転職したいのか。今が本当にそのタイミングなのか。転職して自分は何を得たいのか……。それらの答えがすんなり出てこないのなら、転職すること自体を見直す必要があるかもしれません。もし、仕事でうまくいかない現状を打開するための手段として転職を考えているとしたら、たとえ会社を変えても、問題が解決されるとは限らないからです。

 例えば「今の会社では、やりたい仕事をさせてもらえない」という不満から転職を考える人は少なくありません。しかし日本は、まだまだ人に対して仕事を割り当てるメンバーシップ型の雇用形態が多いため、ジョブローテーションを繰り返しながら経験を積ませ、個人の能力開発を行うケースが主流となっています。

 そのため、人事のアサインメントが明確でないことも多く、本人にとっては不本意な環境に置かれていると感じる場面もあるでしょう。ですが、それは次の大きなチャンスにつながるキャリアの過程かもしれません。広い視野で、客観的な社内情報を集めながら、現状を冷静に見極めることも大切です。

自分に合った転職先がなかなか見つからない場合、自己分析がきちんとできていない可能性がある
自分に合った転職先がなかなか見つからない場合、自己分析がきちんとできていない可能性がある